目次
序 章
1 思考表現スタイルと論理的思考
2 学校の特別な役割
3 小論文の型と「論理的である」と感じる根拠
4 なぜフランスなのか
5 本書の構成
第一部 論文構造から生まれる論理と思考法——哲学と文学のディセルタシオン
第1章 論文の構造と論理の型——エッセイとディセルタシオン
1 「論理的」であることの探求
2 ディセルタシオンの構造と論理——エッセイとの比較から
3 構造から導かれる米仏の論理の特徴
第2章 哲学のディセルタシオンと哲学教育——吟味し否定する方法を教える
1 哲学のディセルタシオンの特別な地位
2 哲学教育の目的、内容構成と方法
3 哲学のディセルタシオンを書く
4 哲学のディセルタシオンを分析する
5 小括——哲学のディセルタシオンに見る思考表現のスタイル
第3章 文学のディセルタシオンと文学教育——文学鑑賞と論理的思考
1 高校のフランス語(文学)教育——目的と構成
2 文学の論述問題
3 文学のディセルタシオンを書く
4 文学のディセルタシオンに見る弁証法の論理
第4章 ディセルタシオンの歴史——新しい社会の論理の模索、伝統と革新の接点
1 伝統的な教育——フランスの論理的文化と三つの形式主義
2 フランス革命とディセルタシオンの創造
3 哲学教育とディセルタシオン——自由に自律して考えるための訓練の創造
4 小括 ディセルタシオンは教育を刷新したか——変わったものと変わらなかったもの
第二部 論理的思考の段階的な訓練——ディセルタシオンを目指した言葉の教育の全体像
第5章 小学校で教えられる論理——言語の内的論理と視点の一貫性
1 文法・描写・物語を通した論理的思考
2 作文(rédaction)——形式による論理的一貫性を学ぶ訓練
3 物語の創作における二つの訓練——視点による論理的一貫性と物語の「定義と型」の習得
第6章 中等教育で育まれる論理——「論証」から「弁証法」へ
1 中学校における「論証」——自然の配置から論理の配置へ
2 高校で育まれる論理——弁証法という思考の飛躍
3 小括——高校で育まれる論理と論理的思考
第三部 判断し行動するための論理——推論する、討論する、合意するための教育
第7章 歴史教育——過去の解釈と未来予想に見る推論の型、「合理性」の判断基準
1 フランスの歴史教育の構成——教科書に見る時間の概念と歴史認識
2 フランスの歴史教科書の構造と授業の構造
3 過去はどう語られるか——フランスの歴史授業の五つの特徴
4 視覚イメージで教える効果——見えるものから「見えないもの」を読み解く
5 いかに評価するか——良い説明(歴史の語り)と求められる能力
6 未来はどう捉えられているか——歴史教育に見る過去・現在・未来の構造
第8章 歴史教育の歴史に見る思考法の変遷
1 歴史教育の転換点(一九七〇年代の改革)——新教育とアナールの歴史研究の方法
2 揺り戻しと新たな発展——公民教育としての歴史と年代史・政治史の復活(一九八〇年代)
3 史料から構築する歴史へ——生徒の多様化とデカルト的方法(一九九〇年代から)
4 グローバル化・情報化への対応——共通基礎の導入
5 二〇〇〇年以降のディセルタシオンの大衆化と歴史教育——理想と現実、断絶と継承、批判と実像
6 教育の大衆化とテーマとイメージによる歴史
第9章 市民性教育——合意形成の手続き
1 言葉の定義を通した合意形成と共通の文化の構築
2 学級の規則作り——手続きの遵守と形式主義(公民科)
3 言葉の定義から「判断の基準」を学ぶ
4 「社会は変えられる」——フランス革命の遺産を伝えるプロジェクト
5 哲学による前提の合意形成——歴史に学び、共同体の文化を形成する討論
6 討論から政治的行動へ
7 政治教育としての市民性教育——言葉の定義と手続き遵守の社会生活への適用
終 章 フランス社会の〈論理〉の構築——ディセルタシオンが導く思考表現スタイル
1 思考表現スタイル——思考・判断・表現の型
2 社会の利益か、個人の目的達成か——共和主義と民主主義
3 民主主義型の思考表現スタイル——補助線としてのアメリカ
4 結語 小論文の〈論理〉から考える社会の未来——フランス、アメリカ、そして日本
あとがき
参考文献
資 料