さんの書評2017/09/26

ダイエットの科学(The Diet Myth)

ダイエットの科学(The Diet Myth)
名門ロンドン大学の遺伝疫学教授が現在、世の中で一般的に知られているダイエット法について科学的な検証を基にその内容の真贋をメタ解析など公平な分析方法を用いてまとめている。
その内容からこの本の結論は「太るのは体質であり、その体質というのは腸内環境(腸内フローラ)に左右される。したがって、腸内細菌を育み、改善するために多種多様な食品をバランス良く食べよう。」である。
腸内フローラは近年の医学界における大きなトレンドの一つで、身体的、精神的な病気の原因になり得るということが徐々に判明しており、健康の重要なファクターとされている。

以下、本に書かれていた内容の中で重要と感じた部分を抜粋する。

カロリー
体が食べ物からエネルギーを生み出すプロセスは、その食物源や、咀嚼した回数、消化しやすさ、食べ合わせなどによってかなり違ってくる。ある研究では白米はスプーンで食べるより箸で食べたほうが、血糖値の上昇と、それによるインスリンの分泌速度(GI)を大幅に抑えられることがわかっている。
多くの研究者が、このGI値は体重を調整するうえで重要だと考えているがヒトを対象とする数少ない比較臨床研究では、今のところ、GI値の多寡は体重や心臓疾患のリスク要因に違いは見つかっていない。

倹約遺伝子仮説(来る不作時期に向けて、ヒトは基本的に太るように遺伝子がコードされている)に対して、浮動遺伝子仮説がある。
これは200万年前まで体脂肪に関するヒトの遺伝子とその蓄積メカニズムは今よりも厳しく抑制されており、過度に太っていると生き延びるうえで大きな問題になったという説である。
ヒトの祖先であるアウストラロピテクスの骨格からは、腹を空かせた肉食動物に食べられるのは日常的な出来事だったという証拠が数多く見つかっている。当時は、体重が120キロもあって、サーベルタイガーの仲間の獲物とされていた。太っていると逃げ遅れるし、筋張ったヒトよりもお良かったことだろう。この二つの理由で、遠い過去に存在した肥満遺伝子は負の自然選択を受け、人の脂肪の最大量が抑えられることになった。
とはいえやはり、やせすぎても不利になった。ふつうは食べ物が豊富にあったが、冷蔵庫も冷凍庫もない当時は、だれもが非常用の脂肪を蓄えておく必要があった。つまり、極端に痩せていたり、逆に極端に太っていたりすると、遺伝子がひそかに、その中間に押し戻すメカニズムを動かしていたのである。
その後、自然界に捕食者が徐々に姿を消すにつれて、素早く逃げる必要もなくなったので、体脂肪が上限を超えないように制限する遺伝子の働きは、それ以前よりも緩やかになっていった。もちろん、体脂肪が増えないようにする遺伝子をたまたま持ち続けた人もいたが、それ以外の人では、その遺伝子の効果は弱まって、体脂肪の上限は上がった。その結果、上限まで体脂肪が増え続ける人たちがいる一方で、人口のおよそ三分の一に相当する人たちは食べ物に囲まれていても痩せたまま、という状況になったという。痩せ形の遺伝子を持つ人には、運動習慣の多さと関連する遺伝子もあることを考えれば、この説も筋が通ていると言えるだろう。

人工甘味料および保存料
誰もがダイエット飲料を好きなわけではない。味蕾が鋭すぎたり、ある種の遺伝子バリアントがある人は、その人工的な味が強烈すぎて不快に感じる、後味が嫌いだという人もいる。越した嫌悪感の原因としては、そうした飲み物に含まれている、佐藤の味を真似しようとしている化学物質の舌触りや構造に、私たちが極めて敏感だということもあるだろう。炭酸もまた別の要因で、脳をだまして、その飲料が実際よりも甘くないと思わせることが出来る。気の抜けたコーラはたいてい、飲めたものではない。
確かに、ダイエットコーラのグループの方が、体重の増え方が通常のコーラを飲んだグループよりも少なかったが、劇的に少ないわけではなかった、ダイエットコーラグループの体重増加を平均してみると、予想以上に多く、がっかりさせられる結果だった。一方、通常のコーラを飲んだグループと比べて、満腹感の違いもわずかしかなかった。
アスパルテームは脳の視床下部の細胞に影響することがあり、理論的には、食欲調節経路を混乱させる可能性もあるからだ。

ビタミン
マルチビタミンについて実施された信頼性の高い大規模な無作為化試験の結果、はっきり示されたのは、有効性は一切ないということである。むしろベータカロチンやビタミンE、更に高用量のビタミンAを含む各種サプリメントは、明らかに体に害があるというのだ、ほかの抗酸化ビタミン、葉酸、ビタミンB群を含むサプリメントにも、マルチビタミンサプリメントやミネラルのサプリメント同様に死亡率や、主要な慢性疾患の罹患率を下げる効果は見られなかった。
またオメガ3は、子供の認知機能や知能指数、注意欠陥障害には全く効果はなく、心臓疾患のリスクを下げることは出来なかった。
またビタミンCサプリメントには、風邪や、がんなどの病気を予防する効果はないという。亜鉛サプリメントなどには、前もって服用すれば風邪の回復を半日はやめられる可能性があることを示す研究がいくつかあるが、オレンジやブロッコリーにも同じ効果がありそうだ。
ビタミンD不足の解消には日の当たるところに1日10~15分座って、顔や腕に太陽光を当てる、あるいはそれが難しい場合は、脂肪の多い魚を食べると良い。
太陽光はメラノーマの「原因」だといわれるのを耳にする。しかしメラノーマの研究が示していたのは、日常的な強い日焼けと、メラノーマのリスクのわずか50%の増加に関連性があるということに過ぎない。つまり、太陽光の浴びすぎで説明できるのは、メラノーマの症例のうちのせいぜい4分の1足らずなのだ。こうした比較的穏やかなリスクは遺伝子によって決まる肌の色のタイプ違いを考慮すれば、見えなくなってしまう。実のところ、メラノーマの主な原因は遺伝子と不運であり、太陽光のせいではないのである。
またビタミンDのサプリメントを摂取した軽9万5000人以上の被験者を分析したところ、サプリメントが死亡率や骨折の発生を抑えていることを明確に示すエビデンスは見つからなかった。

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