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脳とバーチャル世界の間にある際限のない欲望のループ

ゲームとポルノが若い男性に与える悪影響について考察したもの。
著者は心理学が専門だが、社会学から脳科学まで広範な知見が提供されている。
ゲームもポルノも脳の快楽中枢=側坐核を刺激しドーパミンの分泌を促進する。
が、男性のほうが女性に比べて2~3倍もの放出があり、強烈な快感が得られるうえに馴化も進むから、はるかに依存症になりやすい。
IT化の伸展によって、以前はハードルが高かったポルノへのアクセスも容易になった。
バーチャル世界のゲームとポルノに強烈に惹き付けられて抜け出せなくなり、現実社会への適応性を失った男性が急速に増えている。
これが、著者らのいう「男子劣化社会」である。
本来、肉体を通して(=肉体の物理的制約の範囲内で)のみ脳が得られるはずの満足が、IT化の進展によって直接脳に入ってくるようになった。
脳の欲求に対する肉体の制約が大幅に減ったのが今のIT化社会だ。
ネット通販で居ながらにして必要なものが手に入るとか、図書館に行かなくても調べ物ができるなどとという程度ならまだしも、報酬系が関わってくると厄介だ。
それこそ、脳とバーチャル世界の間で際限のない欲望のループがはじまる。まるでバッテリーをショートさせたようなものだ。
そうなるともう、いきつくところまでいって、最後は壊れるしかない。
本書ではそれを防ぐためのいろいろなアイディアも提出されているが、現実には非常に難しいと感じる。
宮台真司氏がよくいう「男子の性的な後退」も、この流れにのっているものだろう。
そして、大多数の男子は映画「マトリックス」のように、直接、コンピュータに繫がれる道を自ら選び、それでもそれなりに幸せな人生を送るのかもしれない。
原題は『man(dis)connected)』
ネットに繋がれ、現実社会との接続を切られた男たち。
もう、後戻りはできない気がする。

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