さんの書評2018/01/02

大枚はたいて入居した終の棲家から放り出されないために

2000年に介護保険法が成立して約20年が経過し、雨後のタケノコのごとく増えた介護事業者がいま、バタバタと倒産、廃業しているそうだ。
その数、おととし(2016年)は1000件を超えたとのこと。
素人が金儲けで介護ビジネスに参入したはいいが、予想外に厳しいビジネスで持ちきれなくなって放り出すらしい。
全財産をはたいて入居した「終の棲家」が突然なくなってしまうことのないように、どうすれば潰れない介護事業者を選ぶことができるか、というのが本書のテーマである。
これまで関心がなかったので、たとえば有料老人ホームは厚生省管轄、サ高住は国交省管轄など、まったく知らなかったことが多くてたいへん勉強になった。
介護が労働集約型サービスであるかぎりは、奴隷でも使わないかぎり大儲けはできない。
だから、外国人労働者を・・・という話になるのだろうが、入居者も介護スタッフも、どちらもバカにした話である。
いちばんたいせつなのは介護スタッフの質と量、ということだが、見極めは難しそうだし、ビジネスならばいい人材を確保するにはそれなりの人件費がかかるのは自明の理なので、結局は、介護の沙汰も金次第、ということになりそうだ。
鈴木大介氏の『老人喰い』では、オレオレ詐欺は裕福な老人に対する貧困な若者の経済ゲリラだ、という主張があったが、一見裕福にみえる老人たちも良い老人ホームに入ろうと思ったら貯金が5000万あっても足りないくらいだとすると、決して安穏のしているわけではない。むしろ命がかかっているという切実さは老人のほうが強いだろう。
若者も老人もすくわれない。なんだか、社会全体の歯車が狂ってしまったような、妙な徒労感を覚えた。

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