さんの書評2016/12/11

ヨーロッパ、イスラム、北アフリカの大きな歴史の流れを掴むには有益な本である。

前回を読んではないが、今回はその前回言及していない地域の歴史を紐解き、どのように国が形成されたのかを分かりやすく論じている。
扱う地域はアフリカやアメリカ大陸、エジプトやインド、ドイツとイスラム諸国である。
その中には綱がありとして中国も含まれているが、如何に地域を論じようとしても歴史的にはやはりヨーロッパ諸国が中心であり、それに繋がるイスラム諸国との関係が大部分である。
イスラム諸国の歴史的な流れ、特にイスラム教がどのように布教していったのか?それに対してヨーロッパ特にカトリック教会を中心としたローマ教皇や十字軍との争いは非常にわかりやすく、世界史を勉強していない者にとっても入りやすいものとなっていた。
またイスラム教の中でもシーア派とスンニ(スンナ)派の違いと成り立ちに始まり、その後の発展やそれぞれの国の建立は詳細に説明されており、現イスラム教徒によるテロ行為を理解するのに役に立つ部分があった。
但し、著者は歴史学者ではないため語尾が「~であろう」など推論として締めくくっており、詰めの甘さを感じた。
また歴史を学ぶことにおいて詳細な地政学的、経済学的なアプローチが少なく、近代のEU諸国、アメリカとが仕掛けた政策の裏側への言及・踏み込みが少なく若干の物足さを感じる部分があった。
また今後、経済発展が見込まれるASEANに対する示唆が乏しく、残念であった。
特にイスラム教がインドやマレーシアで信仰された原因を「異国からやってきたイスラム教徒がかっこよく見えたから」とはいただけない。
では、なぜインドにはイスラム教が二番目に多いのか?なぜヒンズー教がいまだ多いのか?マレーシアではイスラム教が最も多いのか?そのほかの海洋貿易で栄えた東南アジア諸国とどこが違うのか?
専門家ではない著者に多くを期待するのは酷だが、残念であった。
しかし、全体的には各国様々な歴史があり、同時進行で進む時間軸をぶつ切りではなく、イチジクとしてまとめあげる手腕には舌を巻くものがあり、著者の咀嚼能力・表現力の高さを垣間見れ、良書と言える。
個人的には、以前に読んだロバート・D・カプラン著『地政学の逆襲 「影のCIA」が予測する覇権の世界地図』の方がより詳細に論じており、こちらをオススメする。

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