さんの書評2017/10/14

梅干しと日本刀

梅干しと日本刀
モーニングサテライトの「リーダーの栞」で紹介されていたのを観てこの本にであった。
過去を否定するのではなく、日本人の特性から生まれた伝統を振り返り、西洋文化が流れ込んできた明治以降、現在に至るまでに失われた隠れた風土、経験に根差した科学を礼賛する本である。
過去を礼賛する本は過去、谷崎潤一郎「陰翳礼賛」を読んでおり、その淀みのない文体と着眼点に甚く感動したためこの本にも期待していた。
しかし、前書きにも書かれているがこの本は基本的に口述紙であり、その結論に至った引用文献や科学的な裏付けが非常に弱い。
例えば、現在の日本において人間関係は希薄になっており、隣人の死を知らずに放置している事件が頻発しているとこの本では紹介されている。
確かに隣人との交友関係は現在、希薄であり、隣人はどのような人かを知らずに生活しており、田舎の方がその点、接点が多く、町もしくは集落単位で相互に人の目が行き届いており、隣人の死に気づくことも多かったはずである。
しかし、隣人の死の放置は本当に多くなったのであろうか?
現在であればインターネット、テレビがあり、過去は新聞が、その前は口伝が主な連絡手段であり、情報の伝達スピードがそもそも異なっており、耳に入る事件の量もスピードも異なる。つまり、事件の発生頻度自体の違いではなく、肌感覚で多く感じているだけではないのではないか?
せっかくの復刊版であるのでいくつかの点について引用文献などを調査するなどして精査することは可能であったので非常に残念である。
このような部分は多々あり、日本語の日常用語が世界一多いなどは調査すれば間違いであることはすぐに判明でき、注意書きなどできたはずである。
また文章の結びの殆どが「~と思う。」、「~であろう。」で終わるのは、筆者が考古学者という科学者を謳うならば落第点を押されても仕方がない。

一方、日本の城郭は堀であり、西洋の城の城壁とは異なる理由の考察などは非常に面白い。しかしその点に関しても、もっと地政学的な違いなどの説明があればより深い洞察が出来たのではないかと感じる。
礼賛することにより、過去を美化し、現在に一石を投じることは良いことではあるが、ただ無条件に礼賛するのではなく、もう一歩進んだ洞察、提案などがあれば良かったと感じる本であった。

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