さんの書評2017/10/07

ボクたちはみんな大人になれなかった

ボクたちはみんな大人になれなかった

Twitter発「140文字の文学者」とも呼ばれる燃え殻さんの作品
うだつの上がらない若者が20代前半で自身の仕事の激しい変化の中で、心身を疲弊していく中で、一服のオアシス的な存在である”ブスな彼女”に安らぎを求めるが、ついには別れてしまうも東京のしっかりと受け入れられる。
しかし、ある日facebookで結婚した彼女を見つけてしまい、間違って友達申請してしまう。
これを機に昔の思い出に浸りながら、その空気、肌感を回想する話である。
140文字の制約があるためかとても平易な文体であるが、その描写は質感を伴うもので読者としてはその刺激を皮膚で感じるためノスタルジックな描写に映る。
駐車場の金網に大きな意味もないのに、よじ登った時に指に食い込むその痛み。よじ登りながら語る相手との言葉。
全てに大きな意味はないが、そこに若さの喜び、大人、都会への反感をより歳をとって自分に感じ、共感を生む。
失ったものへの羨望を読者に隆起する。

ただ個人的にはその質感には共感は出来るが、深さを感じるものではない。
質感から心身への影響、更にはその結果遷移する自身の変化や成長、彼女とのすれ違いなどは描かれていないため物足りない。
それは別れの理由が書かれていない部分にも繋がっており、全体的にまさにゴールデン街で飲みながらトクトクと語るような作品に感じる理由であろう。
男は過去を、女は未来を見据える生き物である。と仮定すると男はこの甘酸っぱい回想に共感を憶え、自らの心に問いかけるきっかけにはなると思う。
その点で言えば、日本人の約半分には批判はあれど受け入れられるものであろう。
一方、女性にとっては「男って勝手に自分を評価してめんどくさい生き物だ。」と思われるであろう。
つまり、全ては独りよがりの本になってしまっている。
但し、独りよがりだから、この本が悪いという結論になるわけではない。
元々のタイトルから考えれば、独りよがりは織り込み済みなのであるから問題はない。
しかし、叙情詩としてリアルではあるが、個人的には少し物足りなさを感じる作品であった。

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