みんなの書評

さんの書評2017/07/19

一言で言えば、買うのに勇気が要る本。


書店ではあまり見ることがない本。(理由としては、恐らく値段が高いことが挙げられる。)だけども中身は値段以上のクオリティ。米津さんのファンである私にとっては宝物の一冊です。
内容:ロッキング・オン・ジャパンで連載されていたもの(2013年8月号~2015年12月号)+書き下ろし13体 全41体+love(CD。一曲のみ)価格4300円+税
備考:ロッキング・オンのサイトでは売り切れとなっている。(2017年7月現在)
感想:私の知人(ジャニヲタ・非ヲタ・リア充etc...)曰く、「最後の”かいじゅう”が心にきた。」とのこと。
因みに私は文句無しの5つ星です! 但し発売前(一月前)に予約したのに対し、受け取りできたのが発売から10日後だったのが心残りです…(入荷予定が一切無かったのと配送方法が船便という不幸のダブルパンチ。)買うには色々な意味で勇気が要る一冊です。
公立図書館に入れられる可能性は、皆無に等しいと思います。(製本方法がかなり特殊な為、メンテナンスが難しい、本の値段が高いことが挙げられる。)
私が云えるのはここまでです。御免なさい。

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さんの書評2017/06/243いいね!

失敗の科学

失敗の科学
失敗を失敗のままにしない仕組みを精緻に組んでいる航空業界とその対岸に位置するとされる医療業界を中心に失敗を多くの事例を示しながら、科学的に平易な言葉で簡潔にまとめ上げられている良書であった。
特に成長するためには失敗を称賛する環境を作り、文化とする土壌が必要であることが重要である。
個人を攻撃するのではなく、失敗を成長の糧と捉え、適切なフィードバックを行い集団として改善を進めるべきであることがこの本には事細かに記載されている。

以下、著書から引用する。
クローズド・ループ現象のほとんどは、失敗を認めなかったり、言い逃れをしたりすることが原因で起こる。
疑似科学の世界では、問題はもっと構造的だ。つまり、故意にしろ偶然にしろ、失敗することが不可能な仕組みになっている、だからこそ理論は完璧に見え、信奉者は虜になる。しかし、あらゆるものが当てはまるということは、何からも学べないことに等しい。

いわゆる「一万時間ルール」(才能が開花するまでには1万時間の訓練が必要という法則)だ。もちろん誰でも世界チャンピオンになれるわけではないが、たいていの人は努力によって熟達できる。
しかし、全く異なる研究結果も出ている。職種によっては、訓練や経験が何の影響ももたらさないことが多いという。例えば、心理療法士を対象にしたある調査では免許を持つ「プロ」と研修生との間に治療成果の差はみられなかった。なぜか?
ゴルフに例えると練習場で的に向かって打つときは1回1回集中し、的の中心に近づくように少しずつ角度やストロークを調整していく。
しかし全く同じ練習を暗闇の中でやっていたとしたらどうだろう?10年頑張ろうと100年続けようと、上達することはない。試行錯誤が不可能なのだから。
心理療法士の仕事は患者の精神機能を改善することだ。しかし治療が上手くいっているかどうかは、何を基準に判断しているのか?フィードバックはどこにあるのか?実は心理療法士のほとんどは、治療に対する患者の反応を、客観的なデータではなく、クリニックでの観察によって判断している、しかしその信憑性は、甚だ低い。患者が心理療法士に気を使って、状態が良くなっていると誇張する傾向があることは、心理療法の問題としてよく知られている。
心理療法士は、治療によが成功した患者の精神機能がそのあとも良好かどうか、あるいは結局失敗に終わったかどうか、全く知らない。つまり、治療の長期的な影響に関するフィードバックが全くないのだ。
こうした新弾力や判断力を高めたいときに大事なのは、熱意やモチベーションだけではない。暗闇に明かりをつける方法を探すことが肝心だ。間違いを教えてくれるフィードバックがなければ、訓練や経験を何年積んでも何も向上しない。

自分の失敗を隠す「内因」が認知的不調和(自尊心や保身による内発的な動機付け、言い訳、バイアス)だとしたら、「外因」とも言えるのが、非難というプレッシャーだ。非難の衝動は、組織内に強力な負のエネルギーを生む。
何かミスが起こった時に、「担当者の不注意だ!」「怠慢だ!」と真っ先に非難が始まる環境は、だれでも失敗を隠したくなる。しかし、もし「失敗は学習のチャンス」と捉えられる組織文化が根付いていれば、非難よりもまず、何が起こったのかを詳しく調査しようという意思が働くだろう。
適切な調査を行えば、ふたつのチャンスがもたらされる。ひとつは貴重な学習のチャンス。失敗から学んで潜在的な問題を解決できれば、組織の進化につながる。もうひとつは、オープンな組織文化を構築するチャンス。ミスを犯しても不当に非難されなければ、当事者は自分の偶発的なミスや、それにかかわる重要な情報を進んで報告するようになる、するとさらに進化の勢いは増していく。

成長型マインドセットは「合理的に」諦める。
成長型マインドセットの人ほど、諦める判断を合理的に下す。成長型マインドセットの人にとって『自分にはこの問題の解決に必要なスキルが足りない』という判断を阻むものは何もない。彼らは自分の”血管”を晒すことを恐れたり恥じたりすることなく、自由に飽きられることができる。
つまりそれは引き際を見極めてほかのことに挑戦するのも、やる抜くのも、どちらも成長なのだ。そして、我々が最も早く進化を遂げる方法は、失敗に真正面から向き合い、そこから学ぶことなのだ。

互いの挑戦を称え合おう。実験や検証をするもの、根気強くやり遂げようとするもの、勇敢に批判を受け止めようとするもの、自分の仮説を過信せずに真実を見つけ出そうとするものを、我々は賞賛すべきだ。
「正解」を出したものだけを褒めていたら、完璧ばかりを求めていたら、「一度も失敗せずに成功を手に入れることができる」という間違った認識を植え付けかねない。
自分の考えや行動が間違っていると指摘されるほどありがたいものはない。そのおかげで間違いが大きければ大きいほど、大きな進歩を遂げられるのだから。批判を歓迎し、それに対して行動を起こす者は、友情よりもそうした指摘を尊ぶといっていい。己の地位に固執して批判を拒絶する者に成長は訪れない。

データとフィードバックは有意義な進化への舞台に「明かり」を灯す。ポイントは、判断力を養える環境を作ることだ、有意義なフィードバックなしに改善は望めない。間違いを警告してくれる「信号」をシステムの中に取り入れることが肝心だ。

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さんの書評2017/06/131いいね!

奥さん、お待たせしました!

奥さん、お待たせしました!
「水曜どうでしょう」のカメラ担当ディレクター・嬉野雅道氏が綴る、珠玉のエッセイ第2弾!
『ひらあやまり』から約2年ぶり、待望の第2弾は、うれしー流・人生哲学書!?
読めば、人生観が変わる! ……かも、ですよ~。

私が何度も読み返しているのは、第8話、小学6年の夏、水泳大会に人生を見た男の話。
水泳が苦手だった著者が、なんとかいんちきして、出ないですまないかなと思っていた水泳大会。でもけっか出る羽目になって。その順番を待っている時、他人事が、自分のことになるということに、思い至ります。結果少年も、すぐに順番が来て、プールに飛び込む・・・それを、彼は父親が亡くなった時に思い出します。自分もいつか、そうなる・・・若い頃は年をとるのが怖かった。でもなぜだかしぜんと、そうなる、って言われると安心したような気持ちになりました。自然と。。こんな話がいっぱいはいっている、素敵なご本です♡奥さん、おかいなさい♡

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さんの書評2017/05/31

▪自分でおいしいって、頭で食べるのではなく、体で食べる

▪自分でおいしいって、頭で食べるのではなく、体で食べる
▪体にいいものも自分に合ってないと意味がない
▪いつ何をどう食べたかで次の食事をきちんと考える
▪体に向き合う時間を作る
▪自分だけの時間を作る
▪できることだけできる時間にできる方法でやる
▪仕方がないとあきらめずリカバーする方法を知る
▪ストレスは悪いものじゃなく、スイスイできる得意分野より苦手の中にこそ可能性が満ちている▪叱られる、心と体の背筋が伸びる
▪すぐできることでなくコツコツ続けて気がついたら出来るようになってた、そんな気づかないほどの緩やかさで体が整っていく
▪感じよく年を重ねる
▪自分のまっすぐが、まっすぐでないことを知る
▪筋肉は、いつも動いてるように動きたがるから、どんどん歪んでしまう。できるだけ体は均等に使うことが大切。体が長持ちになる。
▪心は体に動かされてる
▪姿勢を正せば自信の度合いが増す。
▪人の話しを聞くときも、同じ話しでも姿勢を正して聞くと楽しく感じる、全ては体中心
▪脳はひとりぼっち。脳が環境にアプローチする唯一の手段が体。
▪情報は体から脳に伝わり、脳から信号が伝わって体が動いていく
▪笑顔という体の出力を通して脳がそれに見合った心理状態を生み出している

心はコントロールしにくい、だったらまずは体を整えてみる。背筋を伸ばし姿勢をまっすぐに。たったそれだけでも意識すれば、自分の身体が見えてきます。身体の内側がきれいに掃除されると思考がクリアになる。身体を整えれば心が整う。幸せになる力は、きっと、私たちの身体の中に既にあるはずということ。

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さんの書評2017/05/25

生産性―マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

生産性―マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの
働き方改革と声高に言われる昨今、どのようにすればライフワークバランスを良くできるのか?は経営陣だけでなく現場の上司にも求められる部分が多くある。
実際、管理職になった自分にとっては考えなくてはならない事項である。
ただ何をどうすれば生産性が高くなるのか?
仕事を素早く終わらせることだけが生産性向上に寄与しているのか?
部下に何を指示すればそれらを向上させられるのか?などの課題解決のためにこの本を参考にした。

この本によれば、最終目標を考えどのようにすれば最短距離を通れるのか?を常に意識すべきであることがわかる。
自分に置き換えて考えれば、最終目標(つまり、効率よく採用率を上げる)である。
やるべきこととやらないことの取捨選択
その根源としてこの本には以下のように断言されている。
管理職の仕事とは、「チームの生産性向上のためのリーダーシップを発揮すること」
ここで大事なのは生産性向上を個々人に指導するのではなく、リーダーシップを発揮することである部分である。
つまり、自分で畑を耕し部下に種を蒔かせ収穫してもらうだけではなく、みんなにどのようにすればもっと効率的に畑が耕せ、種から収穫できるのかを考えさせる土壌を醸成する意識を持たせるのか?である。
多忙で部下の育成に時間が使えないのは管理職失格である。
目の前の成果を上げるために自分でやる方が早いでは何も変わらない。
忙しいのであれば、逆に部下のスキル向上を促しチームの生産性を上げたほうが結果的にチーム全体の成果も上がる。
また掲げるべきゴールも記載されている。
『常に三割と三%という二つの生産性向上を目指す』
三割 → イノベーション(改革)
三% → インプルーブメント(改善)
現場のスタッフが単独でできる三%の改善とは異なり、三割もの生産性改善を実現するには、管理職の強い意志とリーダーシップが必要で、実施期間も一年を超え、長期的な視野や計画性、リスクをとっての判断も求められます。

結論が出なかった会議 → なぜ今日の会議では結論が出せなかったのか?を記録し、改善を促す。
会議とは「決めるべき結論を決める」のが会議である。
それを基にすれば、ブレストなどで集まる会議には意味は存在しない。

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さんの書評2017/04/292いいね!

脳の強化書を読んで

退屈な日常に刺激を与えてくれる本だった。

「強化書」とある通り、脳を鍛える為にトレーニングメニューがいくつか書いてある。表紙によると66項目のようだ。
作者がMRIのデータなどを基に脳の機能を区別している。なので説得力がある。
印象に残っていることだけ書いておく。

脳にはクセがあり、それをうまく使うと働きがうまくいく
・褒められると喜ぶ
・数字でくくる(選択肢を3つ用意するとか)
・デッドライン(締切やゴール、目標など)を決める

脳を強化するための具体的なアドバイス
※自分のメモに書いてあるのを書き起こしたので下記のアドバイスは本書と微妙に違う。内容に関してはamazonのレビューが分かりやすい。
・友人の休日の過ごし方を考える→自分でその過ごし方を実行してみる
・オセロの対戦中に白と黒を交代する(視覚強化)
・互いに無関係な知り合いの共通点を探す(記憶力強化)
・褒めノートをつくる
・植物に話しかける→例:「立派になったなー」と植物に言えば褒めノートのメニューも遂行できて尚良し
・その日のBEST&WORST発言を決める→この時に「5個挙げる」と決めると脳のクセをうまく利用できる。

読んだ後は自分の脳のMRIが撮りたくなった。MRIとか脳の仕組みに興味を抱いた。
脳のクセをうまく利用して自分の生活を改めたいと思った。デッドライン決めるのは本当に大事だと思った。例えば「2020年までに○○を!」はデッドラインを決めているので脳のクセをうまく利用しているのだと思った。←加えて言うと2020という数字でくくっているので尚良い。

「毎日がつまんない」と思っている人がいれば読むといいと思う。日常を刺激的にしてくれる案を66項目提供してくれる。「読んで満足」ではなく「実行」しないと意味がないので注意。トレーニングなので。

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さんの書評2017/04/161いいね!

教える技術 ーチームリーダー編ー

教える技術 ーチームリーダー編ー
リーダーに必要なものは、部下からの信頼である。
ではどうすればよいか、それは、部下の行動をすぐにほめる事である。
そのことにより非金銭的報酬を積極的に提供し、この仕事をやってよかったとやりがいを与える。

トータルリワード(非金銭的報酬)の6要素
1.承認(感謝すること)
2.均衡(ワークライフバランスへの配慮)
3.文化(連帯感があり、のびのびと働ける職場風土)
4.成長(成長機会の提供)
5.環境(居心地のよい職場づくり)
6.骨組み(具体的ン指示や指導)


行動科学マネジメントによると、例え部下の報告が悪いものであっても、報告自体をほめる事で、部下は進んで、報告するようになり、大事になる前に対処できる。

金銭的報酬以外のもの、達成感や、成長感を与えてあげるのが、リーダの役割。
このチームでよかったと思え、メンバーが、自発的、積極的に動ける環境を作ることである。

成果が出る行動の定着
1.成果が出る行動が何なのかを見つけ出すこと
2.部下が実際に成果が出る行動を繰り返しているかどうかの確認
3.成果が出る行動を継続させる工夫

1.望ましい行動の決定
その業務で成果を上げている人の行動を細かく書き出し、成果を上げている人だけが実践している行動を洗い出す。そして、望ましい行動の候補を部下と話し合い、どの望ましい行動をするか決めていく。
2.チェック(行動の実践を回数で確認)
特にグラフ化して客観的なものとして提示する。
3.フィードバック(さらに行動を増やすために)
報告を受けたら、そのこと(行動)自体を評価(ほめる)
ABCモデル(A:選考条件:行動の直前の環境→B:行動、発言、ふるまい→C:結果:行動した直後に起きた環境の変化)
ショートミーティングに応用すると…
1回目:望ましい行動を二人で決める。
部下は①望ましい行動の実践②できた回数を記録
2回目:結果を聞いて(チェック)フィードバックする(強化)
部下は①望ましい行動の実践②できた回数の記録
3回目:2度の実践の結果を踏まえて行動の修正を行う。

報連相は部下を管理するためのものではない。
報連相は上記、ABCサイクルを廻し、部下に望ましい行動を定着させるための行動であり、部署の戦略と現場の状況のすり合わせの場である。
つまり、現場に立っている部下が集めた情報をトップに提案するなど部署の戦略とすり合わせ、新たな指示を出す。他部署と連携する。さらに上に提案するなどの行動を起こしてあげて、部下にメリットを感じてもらう。
その際の指示はとことん具体的に(日時や頻度、回数など具体的な数値を提示→誰がやっても同じ行動ができるようにシステムを組む)
また報連相の制度をアップするために、その仕事が部署の戦略上、どのように影響しているのか仕事の全体像を提示してあげる。

会議をする際は会議の内容を以下の3つに分類して、重なっているものやあいまいなな会議は削除
1.トップダウン型(情報は上から下へ)
リーダーからの指示命令、意思伝達、連絡、会社が掲げたミッションの開設、プロジェクトの趣旨説明など
注意点
①抽象的な表現やあいまいな言葉はダメ
②1回の会議で伝えるポイントは3つまで
③聞き手の頭の中にフレームを作ってから話し始める。
思いついた順にダラダラ話すのではなく、「今日は例のプロジェクトに関する”期日の件”、”他部署との連携について”、そして”提案時の注意点”の3点について伝えます。

2.ボトムアップ型(情報は下から下からの報告、進捗状況の確認、マーケットの現状の報告など、現場で起きていることをリーダーが把握するための会議
注意点
①報告には必ずフィードバック
②マイナスの報告にはアドバイスを
③求めている報告内容を事前に示す。
3.全員参加型(情報を全員で共有し検討)
問題解決、意見交換、情報分析、ブレインストーミングなど、上司・部下の枠を取り払い、全員がフラットな状態で自由に発言するタイプの会議
①会議のゴールを全員で共有
②否定的なことは口にしない
③事前に遮那で情報を共有しておくとスムーズになる。

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さんの書評2017/04/081いいね!

マチネの終わりに

マチネの終わりに
孤独というのは、つまりは、この世界への影響力の欠如の意識だった。自分の存在が、他者に対して、まったく影響を持ちえないということ。持ち得なったと知ること。-同時代にする水平的な影響力だけでなく、次の時代への時間的な、垂直的な影響力、それが、他者の存在のどこを探ってみても、見いだせないこということ。

自由意志というのは、未来に対してはなくてはならない希望だ。自分には、何かが出来るはずだと、人間は信じる必要がある。しかし、だからこそ、過去に対しては悔恨となる。何か出来るはずではなかったか、と。運命論の方が、慰めになることもある。

グローバル化されたこの世界の巨大なシステムは、人間の不確定性を出来るだけ縮減して、予測的に織り込みながら、ただ、遅延なく機能し続けることだけを目的にしている。紛争でさえ、当然起きることとして前提としながら。前項にせよ、悪行にせよ、人間一人の影響力が、社会全体の中で、一体何になるって。

その本の作者 平野 啓一郎さんの過去の著書「私とは何か――「個人」から「分人」へ」を図らずも読んでおり、そこに書かれた分人化という概念、つまり自分は他者を映した人格である。相手により自分が形成され、その他人を触媒にした自分。結局、自分も他人を触媒にした人格を映し出す触媒である。という考え方を踏まえたうえでこの物語は考察する必要があると考える。
主人公である蒔野は天才バイオリニストであり、ヒロインの洋子は3か国語を操る才女でジャーナリストの二人が織りなす、悲劇的な運命劇である。つまりは性格劇ではない物語が非常に綺麗な日本語でうまく描き出されている。
この本にも記載されているが、「古典悲劇が運命劇であるに対して、近代の悲劇は性格劇である」というものを表したもので、古典悲劇への回顧とも考えられる。
つまり、蒔野のバックグランドが天才バイオリニストであることを始まりとしていない。
洋子も才女である必要はなかった。
しかし、大人になってから多くのものが感じる恋愛に対する考えやいつの間に内に芽生えた過去への悔恨を抉り出し、他者を映す触媒としてこの物語を紡ぎ、運命劇を作り出すためにはどうしても平凡な人物では不足が生じてしまうため、やむ得ずそのような人物として描き出した必然を感じた。
上記に示した文章をどれだけの人が考え、言葉にできるのか?それはそれなりのバックグランドを時代が要求するであろう。
またこの物語で語られる「大人の恋愛」、つまり相手の容姿に対する満足などを超えた「自然と同じ目線」であることの居心地の良さ。自分を他者に映したときに過不足を感ずることのない分人としての相手、それは何よりも尊いものに映り、愛しむものとなる。
過去に自分にも同じような恋愛を体験していたため、蒔野の気持ちが痛いほど心に染み入り、修復した思い、考えないようにしていた心に綻びを生じさせるものであった。
もう二度と手に入らないのだろうかと悩んだ日々も懐かしみながらも、内より染み出す抑えられない感情は如何ともしがたいもので、前を向かなければならない重い頭を持て余してしまう。
但し、この物語でも描かれていたが蒔野は洋子でなくても蒔野であり続けたことは周りの視点からすればそれはそれで蒔野であり、必ずしも悲劇ではない。むしろ悲劇には決して映らない。
最後に再会する二人は何を語り、何をお互いを触媒にして見るのであろうか
最後まで十分に読み応えのある心に刺さる物語であった。
素晴らしい。

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さんの書評2017/03/203いいね!

紳士が書いた紳士のための時間道。それでもみんなにおすすめしたい。

時間術ではなくあくまで時間「道」についての本。「靴下は全部同じ種類のを買えば、左右の組み合わせを探してイライラする時間がなくなるよ!」とか「やることリストは全部リマインダーに登録してすきま時間をなくそう!」とかの具体的ライフハック「術」は皆無(実は1つだけ書いてあるのですがそれは割愛)。
あくまで、仕事をしていない「自分の時間」をどうとらえるか、その時間で何をすべきか、なぜそうすべきかを伝えた本です。

とはいえ、「仕事をしていない時間」イコール「自分の時間」ととらえていること自体が、すでに紳士の考えですよね。家で子育てや家事や介護やらに追われている人は、読むと憤死するかもしれません。髪を切りに行く時間さえないお母さんや、平日は仕事漬けで休日ごろごろしないと過労死しそうなお父さんもたくさんいるはず。
それに、自分の時間で何をするかもすごい。要は本を読んだり思索にふけろうよという話なのですが、その理由は転職のためのスキルアップでも仕事の激しいストレスを解消するための瞑想でもない。自らの魂を高めるため、善き人であるために、自分を成長させていこうじゃないかというのが著者の提案なのです。TOEIC対策やらホットヨガやらは眼中にないわけです。ディケンズすら「読みやすいからだめ、もっと骨のある難しい本を読め」と言う始末。さすが紳士。

それでも自分はこの本をおすすめしたい。
なぜなら、仕事をしていないプライベートな時間がいかに貴重なものか、その価値をはっきりと教えてくれるから。
家に帰っても人間関係でうじうじ悩んでいる場合じゃない。通勤中にぼんやりしてる場合じゃない。だらだらテレビ観てる場合じゃない。
未来が不安だから、自分が劣っている気がするから空いてる時間になんでもつめこむのではなく、こんなに大事な時間をもっと大切なことや大切な人のために使おう、と思わせてくれる貴重な本です。
紳士の人も紳士でない人も、ぜひ一読をおすすめします。

でも、1週間を6日として考えるのは無理。1日は掃除と洗濯で潰れてしまう……。

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さんの書評2017/03/181いいね!

そもそも「お金」ってなんだろうか

『ビットコイン』ってなんだろう?
 ときおり新聞や雑誌などで目にする単語であるが、その実態についてはよくわからないものがある。

 本書は普段、何気なく使っている『お金』が、そもそもなにであるのかを追求し、そのルーツについて見直した一冊である。

 貨幣のルーツをたどるため、著者はまず生存をかけた生物同士の共生関係に起源をみいだそうと試みる。食物の交換による進化的アルゴリズムまでさかのぼっての考察なのだ。

 ずいぶんと根源的な部分から見つめ直すものだ。こういった海外の学術的ともいえるノンフィクション作品を読む醍醐味は、思いもよらない視点から物事を見て、新たな観点を与えてくれることにある。本書も例に漏れず枠に閉じこもりがちな発想を大きく転換させてくれることに役立った。

 著者によると、貨幣の起源は前述した生物的要因のほかに、『債務』が発端ではないのかと疑義を唱える。硬貨が発明されたのは紀元前610年以降のリディア王国であるが、その何千年前の古代メソポタミアでは、すでに利付融資が存在しているとのことだ。

 従来の定説では、貨幣の起源は『物々交換』が由来であるとするが、そんな常識に一石を投じるものである。

 第1章では、貨幣について生物的な進化の面から考察を加え、生存にとって『交換』は欠かせない行為であることを検証する。人間についてもその例に漏れることはないが、脳の発達により『表象的思考能力』を獲得したことで、ツールとしての貨幣を想像し、価値の象徴としたことを脳神経科学の面からの解説へと続く。

 生物学、脳科学、心理学、人類学、宗教、芸術など本書の守備範囲は多岐にわたる。その中でもとりわけ面白かったのは、やはり債務の面からみた貨幣論『第3章 借金にはまる理由?債務の人類学?』だ。

 『お金』は必ずしも有形の商品である必要はなく、固有の価値を伴わなくても、象徴としての価値があれば取引することが可能であるとする。つまり貨幣は、どのように形を変えようとも一貫して価値の象徴であると結論づけている。

 サブタイトルに惹かれて手に取った本書だけに、その絶妙な邦題には舌を巻く。翻訳家の小坂恵理氏のセンスによるものだろう。この人の翻訳ものは11冊刊行されているようなので、また目を通してみようと思う。

 本書の内容については、雑学的な使い道しか思いつかないが、この章だけでも読んで見ることをおすすめする。新たなヒラメキをえることができるかもしれない。

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