目次
第1章 現代アメリカにおけるイスラーム
第2章 アメリカにもたらされたイスラーム
第3章 イスラームに改宗したアメリカ人
第4章 マルコムXとイスラーム
第5章 黒人ムスリムからスンナ派ムスリムへ
前書きなど
ムスリム以外の大多数のアメリカ人にとって、イスラームは、なじみの薄い、「アメリカ的でない」宗教・文化である。イスラームを信奉するムスリムは、いわゆる「アメリカ人」とは異なる「他者」であり、努めて理解しようとしなければ理解しがたい存在としてとらえられる傾向にある。これは、9・11を経た現在でも、ある程度は、真実であろう。しかし、9・11をひとつの契機として、長い間イスラームを自らと切り離してとらえてきた大多数のアメリカ人は、アメリカに住むムスリムという、いわば内なる「他者」に向き合うことを、余儀なくされている。9・11以降、アメリカのイスラームに関する論考が大幅に増加している事実が、これを端的に示しているといえるであろう。
こうした状況は、アメリカだけに限らない。日本においても、イスラームを「アメリカ的でない」とする見方は、一般的であった。(中略)大多数の日本人にとって、アメリカのイスラームとは、未知の領域に属する知見である。それゆえに、9・11以降、日本においてもまた、アメリカのイスラームについて、より多くの情報が求められているといえよう。
本書は、アメリカ社会が内包してきた、イスラームという宗教・文化と、これを信奉するムスリムについて、アメリカ史の文脈のなかで語る試みである。