目次
第1章 公安警察のスパイ作戦
●バイトの「学生スパイ」を養成
●「色仕掛け」でスパイを強要
●弱みにつけ込みスパイを強いる
●訓練された公安刑事の潜入
●公安警察のスパイ組織
●内部告発された公安のスパイ工作
●スパイに仕立てられた青年の手記
第2章「過激派罪」としての微罪逮捕
●天皇警備を目的とした微罪逮捕
●友人名義のアパートに入居したら私文書偽造 (ケース1)
●免許証の住所を友人宅にしていたら免状不実記載 (ケース2)
●偽名で旅館に泊まったら旅館業法で逮捕(ケース 3)
●職質を拒否して公務執行妨害罪で逮捕(ケース 4)
●ナイフを所持して銃刀法違反で逮捕(ケース5) ●駅前でビラ配りをして道交法違反(ケース6)
●引っ越しの手伝いで道交法違反(ケース7)
●「過激派に人権なし」
第3章 公安警察のデッチ上げ事件
●六〇年安保で始まった新左翼弾圧
●白鳥、辰野、菅生事件
●総監公舎爆破未遂事件
●土田・日石・ピース缶爆弾事件
●七一年沖縄ゼネスト機動隊殺害事件
●目撃証言によるデッチ上げ
●自民党本部放火炎上事件
●皇居ロケット弾事件
●犬の臭気鑑定が唯一の証拠
●逮捕令状を乱発する裁判所
●デッチ上げに抗した国家賠償請求訴訟
第4章 一挙手一投足をつかむ監視カメラの群
●二四時間、監視するカメラ
●監視カメラが溢れる渋谷・新宿
●全国の道路網を監視
●冤罪を生む監視カメラ
●侵される通信の秘密
●盗聴を合法化する組織的犯罪対策法
●監視が日常となった社会
第5章 表現活動を封じ込める警備公安警察
●「戒厳令」下の天皇警備
●集会・デモへの過剰警備
●アパートローラー作戦
●友達の友達は皆ガサの対象
●女性を全裸にした身体捜索
●「政治ドロ」を行う公安警察官
●集会・デモ参加者への尾行
●一生監視される社会?
結語 公安警察の解体論
●腐食する警察組織
●肥大化する警備公安警察
●警備公安主導の警察機構
●警備公安を中心とした思想警察
前書きなど
本書で取り上げている新左翼運動への数々の弾圧や人権侵害、つまり「公安警察の犯罪」は、本来、ジャーナリストあるいは弁護士、またはメディアが取り上げ、追及すべきテーマである。
しかし、これらの人々がほとんど話題にもしない状況の中で、今回、私たちがぜひとも書かねばと思ったのは、これらの人権侵害状況をこのまま放置するとすれば、日本社会は限りない超高度管理国家へ行き着くと懸念したからである。
一九七〇年代初頭から始まり、八〇年代、そして今日まで続いている公安警察の新左翼運動へのスパイ工作、微罪逮捕、デッチ上げ—フレームアップ、過剰警備そして執拗な家宅・身体捜索(ガサ)などにおいては、憲法で保証された人権がまったく存在していないに等しい。この事態は、常軌を逸していると言っても過言ではない。まさに「過激派に人権なし」と言うことだが、しかし、被害をこうむっているのは、「過激派」と言われる人々ばかりかその支持者、それと何らかの形でつながる人々にまで及んでいる。
言うまでもなく、権力と市民の間の人権をめぐる関係は、ひとたびこうした人権侵害状況を許容したとき、一方的に、それは限りなく破壊されていくことは必至である。私たちが今日までそれらを「許容」してきた結果が、本書で述べているような運動団体の事務所周辺ばかりか、街頭や全国の道路網を埋め尽くしている監視カメラの群である。そして、一九九九年には盗聴法(および住民基本台帳法の改訂)まで成立し、警察、とりわけ警備公安警察の権限が一段と強化されることになった。
現在日本は、こうした超高度管理国家(超警察国家)へ移行する入り口にあると言えるが、この「移行」が完成してしまうか否かは、私たちがこれから警備公安警察への根底的批判をなしえるかどうかにある。その意味で本書を手始めとして、多くの批判の言論や行動が活発となることを期待したい。
なお、本書は第1章、第2章、結語を小西誠が、第3章、第4章、第5章を野枝栄が、それぞれ分担・執筆した。