前書きなど
はじめに
交渉についての本は数多く存在します。ですから「英語での交渉について書いてください」と依頼されたとき,最初は正直,もうこのテーマは It's been done.(すでに何回もカバーされている)と感じました。しかしじっくり考えてみると,まだまだ新鮮なテーマであると思うようになりました。
交渉自体が複雑であるうえ,そこに文化の違いと言語の壁が加わると,さらに難しくなります。また,日本のビジネスはグローバル化しているので,英語で行う交渉の相手は米国人やヨーロッパ人に限らず,南米,アジア,中近東のビジネスピープルにまで広がってきました。文化が違えば,もちろん交渉の進め方や習慣も異なります。さらに,日本の企業とグローバル市場との関わりもますます増えて多様化してきているため,日本人が英語で交渉する機会も増えてきました。このようなことから,「交渉」というテーマはタイムリーで重要なものになっていると言えるでしょう。
本書の特徴のひとつは,3人の経験豊かな専門家が共同で執筆したものだということです。ロッシェル・カップは異文化理解とビジネスコミュニケーションの専門家で,長年コンサルタントとして活躍してきました。また,仕事を通じて,顧客の米国企業と日本企業の間で起こり得るさまざまな問題を見てきました。小野智世子はシリコンバレーで日米企業間の交渉に頻繁に関わり,さまざまな交渉テクニックを熟知しているベテランです。増田真紀子は,米国で法律と不動産開発という交渉の多い分野を経て,現在は,在米日系企業に対して米国のビジネスシーンを理解するためのコンサルティングを提供しています。この私たち3 人の観点を合わせることで,日本人の読者の皆さんに,交渉を成功させるために役立つヒントや最新の情報を提供できるように努力しました。
本書の構成は次のようになっています。
まず「イントロダクション」で,私たちそれぞれの交渉についての考え方についてお話しします。Ⅰでは,交渉の6段階,そして交渉に影響するさまざまな文化的要素について説明します。Ⅱでは,日本人の一般的なコミュニケーションスタイル,日本企業の組織的な特徴が英語による交渉に及ぼす影響について考えます。Ⅲでは,交渉を成功させるためにはどのような準備が必要であるかを説明します。Ⅳでは,米国の習慣に重点を置いて,日本以外の国で頻繁に使われている交渉の手法を紹介し,それに対処するための方法を説明します。Ⅴでは,交渉の現場で実際に使える英語表現をテーマ別に取り上げ,Ⅵでは,Ⅳで述べた手法を応用した実際の交渉例を紹介します。また,各所に用意したコラムでは,日本人が頻繁に交渉する米国以外の国々の文化や交渉スタイルを解説します。
このような内容により,読者の皆さんは,交渉のさまざまな側面に関して精通できるのではないかと思います。皆さんが実践ですぐに活かせるように,応用可能な情報を重点的に取り上げました。本書を使うことで,皆さんがもっと楽な気持ちで交渉を行えるようになり,よりよい結果を出せることを願っています。
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英語で交渉している日本人の皆さんに,この本が役に立てば非常にうれしく思います。
2011 年2 月
ロッシェル・カップ
小野 智世子
増田 真紀子