前書きなど
≪はじめに≫
本書の目的、それはスペイン語のネイティブ・スピーカーが日常会話で使っている簡単な決まり文句を紹介することです。
日本の外国語教育では、よく「会話は高速で行なう口頭作文だ」と言われます。確かにこうした考えは正しいのですが、その正しさは部分的なものでしかありません。なぜかと言うと、ネイティブ・スピーカーは会話を行なう際に、常に一から作文を行っているわけではないからです。
会話を適切に遂行するためには、言葉が伝える意味と、文法という形、ならびにその言語が会話で果たす機能という、三つの異なる処理を短時間で行なわないといけません。こうした要請に対処するために、ネイティブ・スピーカーは、会話で使用頻度の高い表現を、決まり文句として覚えることで、自分が本当に言いたいことを一から作文する時間を確保するようにしているのです。したがって、私たちノンネイティブ・スピーカーがスペイン語で会話を行なえるようになるためには、口頭作文力と平行して、簡単な決まり文句を使いこなす能力を身につけないといけませんが、今までの日本で書かれたスペイン語の参考書では、旅行会話や日常の挨拶などを扱ったフレーズブックは多数存在しても、決まり文句を体系的に学習するための本はあまり存在しませんでした。そうしたニーズを満たすために書かれたのが本書です。著者にとりましては、本書がみなさんのスペイン語会話の上達の礎となれば、それに勝る喜びはありません。
最後に、本書の姉妹本である『日常フランス語会話ネイティブ表現』と同様、(株)語研編集部の島袋一郎氏には大変お世話になりました。また、上智大学教授のアントニオ・ルイス・ティノコ先生には、スペイン語のバリエーションに関するアドバイスをいただきました。先生のご協力により、本書に収録されているスペイン語は、スペイン及び中南米の両方で通じるスペイン語になったと自負しています。お二人に、ここに感謝の意を表したいと思います。
2010年6月
著者