前書きなど
はじめに
本書は、拙著ネイティブ英語フレーズシリーズ(『ネイティブが話す【英単語・イ
ディオム・決まり文句】』『ネイティブがよく使う【英単語・イディオム・決まり文
句】』『基本100ワードの英会話術』『日常英会話ネイティブ表現』)の第5弾です。
空所補充形式のパターン・プラクティス(substitution)によって英語を話す力を高
めるための基本文型・構文をダイアローグとともに紹介しています。
本書は、創造的な発話能力を高めるために不可欠な定型表現(chunk)の定着を目
的としています。「感謝」「勧誘」「依頼」「要求」「相談」などの機能別に、一部
を入れ換えるだけで自由に言いたいことが表せる基本文型・構文を厳選しました。こ
れまでのネイティブ・シリーズと少々異なり、フルセンテンスの決まり文句ではなく、
学校で基本文として取り上げられるようなフレーズも含まれています。これは、奇を
てらった使用頻度の低い「珍品フレーズ」を選ぶのではなく、ネイティブ・フレーズ・
シリーズに一貫する使用頻度を重視した表現選択の結果です。聞いたり読んだりして
もまったく問題ないのに、話したり書いたりするときに意外とうまく使えない表現が
数多くあるはずです。本書には、学習者の皆さんの頭に眠った「受信構文」を「発信
構文」に蘇らせる意図があります。
実践の場で使いものになる発話は、基本からなる定型部分(構文)と入れ換え可能
な部分の組み合わせからできています。そして、話すときには文脈(context)に応
じて適切な構文を選び、その構文に対応する語句の入れ換えを短時間のうちに正確に
行える技能が必要です。流暢さ(fluency)とはこの構文選択(structural choice)
と語句入れ換え(lexical substitution)の速度を意味し、正確さ(accuracy)はこ
の構文選択と語句入れ換えを意図したとおりに行える精度を意味します。「厳選され
た、使える構文をチャンクとして確実に覚え、文脈に応じて、必要語句をその構文の
一部にはめ込んで復唱すること」によって流暢さと正確さが高まり、達成感と自信が
わいてきます。本書を活用すれば、使用される場面が限定される「決まり文句」では
なく、さまざまな文脈で応用が効く、入れ換え可能でクリエイティブなフレーズを覚
えられるでしょう。
これまでの拙著同様に、本書のプロトタイプとしてまとめた表現データは、大学の
授業や勉強会での口頭演習で約1年半使用し続け、そこから得たフィードバックをも
とに加筆し、修正を繰り返してきました。独習用教材としての質を高め、少しでもユー
ザー・フレンドリーにするために、読者の立場からの視点を重視し、完成原稿の段階
でザビエル道西氏と小亀正人氏にはモニターとして一定期間使用してもらい意見をい
ただきました。本書のすべての英文は、小樽商科大学言語センター助教授で言語学博
士のShawn Clankie先生(米国人)と北海学園大学人文学部専任講師のLorne
Kirkwold先生(カナダ人)に厳重に点検していただき、精度を高めました。さらに、
本書の構成、キーパターンの選択やダイアローグの内容と語彙について、株式会社語
研の奥村民夫氏に助言をいただきました。本書の完成に協力していただいたこれらの
方々に、この場を借りて改めて心よりお礼を申し上げます。
桜舞う緑丘より春の日まぶしい日本海をながめて
国立大学法人小樽商科大学大学院ビジネススクール助教授
小林敏彦