目次
はじめに
第一章 工芸
備前刀(びぜんとう)〈国宝ほか〉
赤韋威鎧(あかがわおどしよろい)(国宝〉
紫糸威腹巻(むらさきいとおどしはらまき)(県指定重要文化財〉
色々威甲冑と鍍金(いろいろおどしかっちゅうとときん)〈国指定重要文化財〉
吹屋(ふきや)ベンガラ
備前三角水指(びぜんさんかくみずさし)・備前筒大花生(びぜんつつおおはないけ〉〈国指定重要文化財〉
備前緋襷大皿(びぜんひだすきおおざら)
純銀小菊重彫菓子器(じゅんぎんこぎくかさねぼりかしき)
純銀地じ鉄象眼葡萄虫花瓶(じゅんぎんてつぞうがんぶどうむしかびん)
阿古陀形兜(あこだなりかぶと)
赤い青備前(あかいあおびぜん)
綾杉地獅子牡丹蒔絵婚礼調度の内 貝桶と合わせ貝(あやすぎじしぼたんまきえこんれいちょうどのうちかいおけとあわせかい)〈国指定 重要文化財〉
色絵宝尽文大皿 色鍋島(いろえたからづくしもんおおざら いろなべしま)
妙覚寺世界図屏風(みょうかくじせかいずびょうぶ)〈県指定重要文化財〉
餘慶寺梵鐘(よけいじぼんしょう)〈県指定重要文化財)
大飛島祭祀遺跡出土物(おおひしまさいしいせきしゅつどぶつ)〈国指定重要文化財〉
能装束 芦水禽文縫箔(のうしょうぞくあしすいきんもんぬいはく)〈国指定重要文化財〉
一遍上人にん聖絵(いっぺんしょうひじりえ)〈国宝〉
箏裏の彫刻(ことうらのちょうこく)
横野箔合紙(よこのはくあいし)
雪舟筆四季山水図巻 山水長巻(せっしゅうひつしきさんすいずかん さんすいちょうかん)〈国宝〉
第二章 史跡
鬼城山(きのじょうさん)〈国指定史跡〉
造山古墳(つくりやまこふん)〈国指定史跡〉
尾上車山古墳(おのうえくるまやまこふん)〈国指定史跡〉
月輪古墳(つきのわこふん)〈県指定史跡・県指定重要文化財〔出土品〕〉
楯築弥生墳丘墓(たてつきやよいふんきゅうぼ)〈国指定史跡)
田原用水水路橋 石の懸樋(たばらようすいすいろきょう いしのかけひ)〈県指定重要文化財〉
主基田(すきでん)
石巻(いしまき)
万富東大寺瓦窯跡(まんとみとうだいじがわらかまあと)〈国指定史跡〉
おわりに
前書きなど
はじめに
私は最初に教職に就いた頃、自炊をした経験があります。その時面白い発見をしました。タマネギを料理に使うためにタテ半分に切って半分を使い、残りの半分は切り面を上にして、調理台の片隅に転がしておいたところ……。
数日後に見ると、水平に寝ているはずなのに、芯の部分が垂直に立ち上がろうとしているではありませんか。なお置いたままにしておくと、芯は少し青みを帯びて元気よく上へ上へ成長してきました。みずみずしい若い芽が目指しているのは天の方向です。生物の絶対的な誘導エネルギーの発生源は間違いなく太陽の光です。
さらに日を置くと、周辺部から水分を減らしていくのに、中心部は周辺部から水分を貰い支えられてなお精一杯生きようとしています。自然界でしかも眼の前で起こっているこの「不動の真理」としての光景。
タマネギの周辺部分は、希望の全てである次世代のために命がけで、何の迷いもなく自分を犠牲にして、全てを若芽に提供し続け、必死で支えているように思えました。
人間で例えれば支えている側は親であり、社会であり国家やあらゆる文化だと思いました。
皆さんも良く知っているイソップ物語は「北風と太陽」「ウサギとカメ」「狼少年」「蟻とキリギリス」等が収録されています。それは2500年も前に古代ギリシャで書かれたものですが、何故今日まで読み続けられているのかといえば、短い話の中で人間はとかく当たり前のことは忘れやすいけれど、実はそれが最も大切であったり、忘れてはならないものの「不変の本質」をついているからです。
毎日朝起きて、テレビのスイッチを入れれば、地球の裏側の出来事もリアルタイムで分かるという便利さを手に入れながら、情報の洪水の中で、忙しすぎて何が「不変の本質」かも分からないまま、この国が何処へ行くのか誰も知らないまま、洪水のように溢れる情報社会を「流れに任せておけば楽だし」と生きているのが今日の大方の状況になっているかも知れません。自分を律する原理原点を探らずしては、またこのままでは決して良いことにはならないでしょう。枝葉末節なことにうつつを抜かしていると、核心の存在さえ忘れるのです。文化財を知れば知る程それへの確信が強まります。絶対にウソを言わず、枝葉末節なところを削ぎ落として今日まで残ってきた文化財と対話する中で、物事の本質を見抜く必要と、見抜くために必要な鍵が文化財のその向こう側にあることを各文化財ごとに示しているつもりです。
このシリーズ第1巻は「工芸・史跡」ですが、第2巻は「建築・自然」、第3巻は「人物・その他」の予定で、文化財の現代的意味について次々と述べるつもりでいます。