目次
第一章 共産中国成立 昆明失陥、大潰走、雲南彷徨……9
第二章 運命の四時間 祖国脱出、ビルマへの撤退……79
第三章 ビルマ軍との死闘 第一次中緬大戦……97
第四章 雲南反攻作戦 孤軍、祖国の土を踏む……123
付録一 克保が編集者に寄せた手紙【一】……185
第五章 孤軍絶体絶命の危機 第二次中緬大戦……191
第六章 バンコク四カ国会議 勝利、異域撤退へ……243
付録二 克保が編集者に寄せた手紙【二】……272
解説 作品「異域」と、彼らのその後についての若干の余話……279
関連年表……298
訳者あとがき……300
前書きなど
この異域は、「血戦異域十一年」という、かつて台湾の新聞に連載された小説をもとに単行本化された作品である。異域とは、読んで字のごとく、得体の知れない遠く離れた場所、外国であり、この作品の場合、地理的にいえば、中国雲南省のまたさらに南のビルマ領シャン州、いわゆる黄金の三角地帯とほぼ重なる地域を指す。また、意識としては、中国の境界線よりさらに遠く離れた、常識の通じない化外の地というような意味合いも持つ。
この異域は、文学作品としての評価が非常に高い。たとえば、刊行後四十年ほど経った一九九九年、香港「亞州週刊」がおこなった二十世紀中国語小説100選において堂々の三十五位を獲得している。単行本も版元を替えては再版を重ね、二百万人以上の人が手に取った。異域は、中国語世界では間違いなく、洛陽の紙価を高らしめた名作であった。また、この作品を元にアンディ・ラウ(劉徳華)、トニー・レオン(梁朝偉)などの豪華キャストで二作品が映画化された。ちなみに、日本語版の本書は英語版に続く翻訳となる。