紹介
◆第一句集
葉先よりこぼれ螢となりにけり
こぼれて分かる螢の美しさは、たちまち消えて美しい虹のようだ。
コスモスや思ひ思ひの風えらび
一面のコスモスが風によって、てんでんばらばらに揺れている。まるで万華鏡。
杉箸の香りを割つて冷奴
「香りを割って」が眼目であり、香りが冷や奴の味覚まで連想させる。
夢や希望といった美しいものを求める態度が、著者の根幹にあることが伝わってくる一冊である。
(帯より・鷹羽狩行)
◆桑島啓司抄出
水温む鱏はマントをひるがへし
うれしさは口笛に出て青き踏む
クルーズのディナーのワイン星涼し
葉先よりこぼれ螢となりにけり
読み聞かす絵本を買うて原爆忌
杉箸の香りを割つて冷奴
美人湯にどつぷり浸り旅の秋
爽やかや吉野は杉の秀を正し
立冬や背筋のばせば影も伸び
花柄の散るほど打たれ干蒲団
目次
序句・鷹羽狩行
鑑賞二句・鷹羽狩行
平成六年~同十三年 7
平成十四年~同十五年 27
平成十六年~同十七年 45
平成十八年~同十九年 63
平成二十年~同二十一年 89
平成二十二年~同二十三年 117
平成二十四年~同二十五年 143
平成二十六年~同二十七年 171
跋・桑島啓司
あとがき