紹介
現代ロシアの
沸騰するナショナリズムの本質を
ドストエフスキーから読み解く!
ソ連崩壊後の混乱と怒りと屈辱感は、
最近の力によるクリミアの併合やウクライナへの介入、
トルコやシリアへの軍事的支援など、
今から150年前のクリミア戦争の敗北から農奴解放、
革命へと向かう一大転換期の時代と類似点が極めて多い。
ドストエフスキーは19世紀後半のこの時期、
『カラマーゾフの兄弟』などの大作の執筆の傍ら、
雑誌に連載した『作家の日記』の評論で、
スラヴ派の論客として政治、社会評論家として
精力的に活動したが、
その主張や当時の対ヨーロッパについての屈折した視点や感情は、
現代のロシアの行動を理解する上では不可欠である。
また付録の「ペトラシェフキー事件」は
ロシアの知識人に共通する思想的骨格であり、
今日に至るロシア人の独特の心理的背景を理解する好材料である。
本書は、プーチンに率いられる
現代ロシアの強力なナショナリズム、
大国意識の底にあるスラブ主義の本質に迫るものとなっている。
目次
まえがき
第一部 沸騰するロシア・ナショナリズムのマグマ
1 ソビエト連邦の崩壊
2 チェチェン人との戦い
第二部 爆発するロシア・ナショナリズム
1 モルドヴァの沿ドニエストル共和国
2 グルジア(ジョージア)のアブハジアと南オセチア
3 クリミア併合とウクライナ
4 歴史的背景──兄弟の骨肉の争い
第三部 ロシア・ナショナリズムの源流
1 領土に固執する民族の遺伝子
2 ロシア・ナショナリズムの形成
3 西方派とスラヴ派の対立軸
4 民族統合の国家理念と体制
第四部 ドストエフスキーとロシア・ナショナリズム
1 一九世紀後半の東方問題
2 ドストエフスキーと『作家の日記』
3 ドストエフスキーの評論① ロシアの正義
4 評論② 正教とナショナリズム
5 評論③ 愛国心とナショナリズム
6 評論④ 西ヨーロッパとの対立と不信感
7 評論⑤ 戦争論
8 評論⑥ ヨーロッパとロシア
9 評論⑦ ロシア人について
10 ロシアの知識人
11 プーシキン記念講演──和解をめざして
12 国家と民
13 民衆の魂
第五部 付録:ペトラシェフスキー事件
──ロシア思想史の断章
1 ロシア民族の進むべき道をめぐって
〈ペトラシェフスキー事件〉〈ベリンスキーとゴーゴリ〉
〈『友人たちとの往復書簡の抜粋』〉
〈「ゴーゴリからベリンスキー宛ての手紙―
一八四七年六月二〇日」〉
〈「ベリンスキーからゴーゴリ宛ての手紙―
一八四七年七月一五日」〉
〈「ゴーゴリからベリンスキー宛ての手紙―
一八四七年八月」〉
2 ドストエフスキーの弁明と真相
〈ドストエフスキーの上申書〉〈嘘と真実〉
〈事件の真相〉〈回想──真実の告白〉
あとがき