紹介
家父長制社会が求める「理想の女性像」と格闘するヴィクトリア朝の女性作家たち。
1960 〜70 年代のフェミニズム批評により、ヴィクトリア朝の女性作家の評価は激変した。
多くの女性作家が「発掘」され、「再評価」されるなかで、家父長制社会が求める
「理想の女性像」と「作家であること」との対立から生じる葛藤や苦悩を女性作家たちが
共有していたことが明らかになった。
ヴィクトリア朝の傑出した3 人の知性派女性作家、
ジョージ・エリオット(1819-80)、ハリエット・マーティノー(1802-76)、
マーガレット・オリファント(1828-97)。
互いに認め合い、ライヴァル視する彼女たちの作品から、家父長制への批判と受容、
女性像の造形、女性の自己実現の過程と社会の関係を考察する。
さらに、これら3人の女性作家の作品を論じることにより、
男性中心主義社会への抵抗と従属の経緯、そして彼女たちの闘いの成果を明らかにする。
目次
I ジョージ・エリオット
第1章 『フロス河の水車場』におけるマギー、語り手、ジョージ・エリオット
第2章 ポリフォニーとしての『ミドルマーチ』
──諷刺家メアリ・ガースの役割と意味
第3章 『 ダニエル・デロンダ』の矛盾
──ユダヤ人の紳士デロンダの限界
II ハリエット・マーティノー
第4章 『経済学例解』における経済学と文学の融合
──『ガーヴェロッホのエラ』と『ガーヴェロッホの喜びと悲しみ』
第5章 フェミニストの社会学者が書いた小説『ディアブルック』
第6章 『時の人』におけるハイチの黒人指導者の栄枯盛衰
Ⅲ マーガレット・オリファント
第7章 モック・ヒロイックで女を語る小説『マージョリバンクス嬢』
第8章 センセーショナル・プロットを支配する母親の物語『セイレム・チャペル』
第9章 『フィービー嬢』における当世風娘と女性の神秘的な力