紹介
麻薬・テロ対策で職権乱用で謹慎処分を受けた警察官の兄。娼婦に無垢な愛を捧げる、知的障害をもつ弟。帰郷した兄は、必死に、かつ暴力的に、弟を娼婦から引きはがそうとするが———
テロ・移民・暴力を必然的に生み出す社会構造、売春・性・麻薬・カネをめぐって渦巻く欲望。
その中を生き抜く人びとは愛に飢え、底知れぬ寂寥感を抱え込んでいる。
スペイン現代文学のフロントランナーが描く「現代人の疎外」状況!
セルバンテス賞コレクション第8作。
〈セルバンテス賞コレクション〉
スペイン文化省は1976年に、スペイン語圏で刊行される文学作品を対象とした文学賞を設置した。名称は、『ドン・キホーテ』の作家に因んで、セルバンテス賞と名づけられた。以後、イベリア半島とラテンアメリカの優れた表現者に対して、この賞が授与されている。このシリーズは、セルバンテス賞受賞作家による、スペイン語圏の傑作文学を紹介するものである。