目次
1 少女あさとそろばん
2 「お家を守る」ことと「学問」
3 「学問」と実業活動
4 社会的な場面での「学問」の欲求
5 炭坑業
6 商売と「学問」
7 銀行業
8 あさと「学問」の欲求
9 「人」の規定
10 あさと女子高等教育
11 あさと女子大学校設立運動
12 ファーストピングイン
13 はつの歩み
14 生命保険業
15 あさと女子学生
16 「お家を守る」という使命の達成についての自己評価
17 あさのその後の歩み──勉強会
前書きなど
ドラマ『あさが来た』のヒロイン白岡あさは、幕末期の京都の豪商・今井家の次女として生まれる。正義感が強く相撲も強い、「なんでどす?」が口ぐせの好奇心旺盛なおてんば娘だが、少女の頃〝おなごには必要なし〟と「学問」を禁じられた。つまり、あさにとっては自分が自分であることが禁じられた。
17歳のとき、許婚の新次郎のもとへ嫁ぐ。夫の実家、加野屋は大阪の老舗両替屋。商売に興味のない新次郎にかわり、家業に奮闘し、新事業の炭坑業や銀行、そして生命保険会社を次々に立ち上げる。新次郎はあさの行動力と情熱にほれ込み、生涯にわたってあさを支えていく。
さらに、あさは女性の未来のため、自分が幼いときには禁じられた学問が、誰にでも開かれたものになるため、日本初の女子大学の創設に尽力した。そこでは「女子を人として教育する事」が目指された。
あさは少女時代に「学問」を禁止され、やむにやまれぬ「学問」の欲求をその後の人生を通じてもち続けた。この欲求は男女差別を超え「人」であること、自分が自分であることの欲求である。
あさは、さまざまな実業活動を通じて、「学問」の欲求の「主体」として形成されていく。そしてこの「主体」形成は女子大学校設立運動のうちでその頂点に達する。彼女の歩みはわれわれ一人ひとりの「人」であること、自分が自分であることが可能になる方向を示している。