目次
序文
謝辞
要旨
第1章 BASIC入門ガイド
はじめに
BASICとは何か
読み進める前に知っておくべきこと
ステージ1:【行動】
政策問題を引き起こしている行動は何か
どの行動を標的にすべきか
望ましい政策アウトカムは何か
標的行動を形成しているコンテクストは何か
ステージ2:【分析】
「遅い」思考と「速い」思考についての概論
注意
信念形成
選択
意思決定
ステージ3:【戦略】
注意を標的にする
適切性を確保する
信念形成を標的にする
選択を標的にする
ステージ4:【介入】
「何が有効か」を知る方法
ステージ5:【変化】
倫理規定
行動科学的に情報を得た介入を開始する前に
BASICの各ステップを進む際に
結論
第2章 BASICマニュアル
BASIC――BIを公共政策に適用するためのツールキットと倫理ガイドライン
BASICの5つのステージ
BIを適用するための倫理ガイドライン
ステージ1:【行動】――問題を特定し定義する
ツール♯1:行動分解:政策問題を行動に分解する
ツール♯2:優先順位付けフィルターを用いて、標的行動の候補の優先順位を付ける
ツール♯3:決定点の面から標的行動の候補を定義する
ツール♯4:行動フローチャートを用いてプロセスにおける重要な決定点を特定する
ツール♯5:行動科学的アプローチに最も適していると考えられる行動問題を選定する
問題を特定し定義するための倫理ガイドライン(【行動】)
ステージ2:【分析】――人々がなぜそのように行動するのかを理解する
人々がなぜそのように行動するのか理解する際の考慮事項とBI
診断的側面と診断指標
人々がなぜそのように行動するのかを理解するための倫理ガイドライン(【分析】)
付録――行動分析の理論的根拠
ステージ3:【戦略】――行動変容のためのBI
注意――関連性を持たせる、注意を引く、(不)注意に備えて対策を講じる
信念形成――検索を誘導する、推論を直感的にわかりやすくする、判断を支える
選択――魅力的なものにする、見込みをフレーミングする、社会化する
意思決定――簡単にする、計画とフィードバックを提供する、コミットメントを形成する
行動変容のためにBI戦略を設計するための倫理ガイドライン(【戦略】)
付録――行動公共政策におけるアプローチ
ステージ4:【介入】――公共政策に寄与するBI戦略を検証する
実験的アプローチの基本的な特徴と概念
実験から「何が有効なのか」を学ぶ
BI実験を実施するための主なステップ
行動科学的に情報を得た政策を検証するための倫理ガイドライン(【介入】)
ステージ5:【変化】――行動科学的に情報を得た政策を実施する
政治的コンテクストとプロジェクトレベルを再考する
行動科学的に情報を得た政策を実施・拡大する
長期的影響と潜在的副作用の監視を計画する
政策イニシアチブを維持管理する
知識を広く普及させる
監訳者あとがき
前書きなど
監訳者あとがき
(…前略…)
そういう意味では、本書は、この様な固有の政策課題の解決に向けた指南となりうる書であると言えよう。本書は行動インサイトを公共政策に適用するためのツールキットである。その具体的な政策ツールとして、BASICが提案されている。行動(Behaviours)は、問題行動を捉え、何を改善したいかを考え、その行動が生じる要因を浮き彫りにすることである。分析(Analysis)は、人はなぜそのような問題行動をとってしまうのかを構造的に明らかにすることである(この分析を支援するフレームワークとして「ABCDフレームワーク(注意(Attention)・信念形成(Belief formation)・選択(Choice)・意思決定(Determination)」が提案されている)。戦略(Strategies)では、問題行動を変えるための戦略を立案する。介入(Interventions)は、ランダム化比較試験等により実証実験を実施して、効果のある介入方法を見つけ出すことである。さらに変化(Change)では、実験や検証から得られた知見を活かして政策を変える原動力になるであろう。
また本書は、BASICよる政策立案のツールキットを示すだけにとどまらず、行動インサイを適用する際に乗り越えなければならない倫理的配慮の方向性も示している。これらの知見は、日本の政策立案者の方々、研究者の方々のお役に立つものであると考えている。
(…後略…)