目次
インド全図
旅のはじめに
第Ⅰ部 旅に出よう
1 夢のインド・現実のインド――私の入印・退印歴
2 「ありがとう」を言わない世界――濃密な人間関係のなかへ
3 インドの多様性に分け入る――カースト、言語、宗教
4 死ぬか生きるかを分けるインド旅行の基礎知識――ビザ、病気・怪我、通貨、渡航先情報
[コラム1]人びととの出会い方、付き合い方
第Ⅱ部 インドの不思議都市を歩く
5 デリー――皇帝の野望、聖者の慈愛
6 コルカタ――宮殿と世間話の街
7 バナーラス――ヒンドゥー教のテーマパーク
8 シムラー――大英帝国の残映
9 ゴア――「インドの中の西洋」の現在
10 ガヤー――死者の冥福を願う人びとが集う街
11 境界の果てのナガランド――天空の街コヒマに想う幻の国
[コラム2]階段井戸――地下迷宮への誘い
第Ⅲ部 多様な宗教を旅する
12 ヒンドゥー聖地を巡礼する――日常を離れ神々の宿る世界軸へ
13 イスラームの聖者廟――宗教の垣根を越えて人びとを魅了する聖地
14 スィク教寺院を訪ねる――教団の歴史を伝え、信徒の生活に息づくグルドワーラー
15 ジャイナ教寺院を旅する――ジナ・マンダラとジャイナ教のティールタ
16 仏教の霊場を旅する――八大霊場からブッダガヤー
17 宗教指導者(グル)を訪ね歩く――カルナータカ州チットラドゥルガの僧院にて
18 一週間に九日の祭り!!――多民族・多宗教国家の祝祭事情
[コラム3]「サンスクリット村」を訪ねて
第Ⅳ部 さまざまな人に出会う
19 ブラーフマン(バラモン)の世界に交わる――サンスクリット文化を育んできた人びと
20 ダリトの世界に交わる――名を問われる、名を名乗る
21 周縁の民ヒジュラーとの出会い――タブーの境界をまたぐ
22 ストリートから考える――交わり、出会い、誘われる原インド的空間
23 チベット難民との出会い――ダラムサラへの誘い
24 インドの入れ墨との出会い――女たちの魂を守るもの
[コラム4]ガーンディーの足跡をたどる
第Ⅴ部 乗り物を楽しむ
25 鉄道の旅の味わい――インドをのんびり移動する
26 路線バス・乗合自動車の旅――「マイ路線図」作成で楽しくなる都市の乗り物
27 飛行機と長距離バスの旅――インドを駆け巡る
[コラム5]ダージリン・ヒマーラヤ鉄道「トイトレイン」――日常の中の世界遺産
第Ⅵ部 インドを泊まり歩く
28 優雅に高級ホテルに泊まる――安宿だけではインドの魅力は見つけられない
29 安宿を楽しむ――これだけは知っておきたい作法
30 ヘリテージホテルに泊まる――インドのお城で見る夢は
[コラム6]キャメルサファリの旅
第Ⅶ部 インドを食べ歩く
31 インドの食事作法は哲学である――水一杯の飲み方から
32 北インド料理あれこれ――小麦文化を堪能する
33 南インド料理あれこれ――豊かな米食文化を探訪する
34 嗜好品あれこれ――チャーイにコーヒーにパーンにタバコ
[コラム7]インドで美酒を楽しむ
第Ⅷ部 世界遺産を旅する
35 インダス文明を歩く――4600年前の南アジア人
36 古代・中世のヒンドゥー寺院――神々の集う殿堂
37 西インドの石窟寺院――岩山に埋もれていた聖なる空間
38 北インドの華麗なイスラーム建築――ムガル帝国の墓廟と城塞
39 ラージャスターン地方の城砦・城郭都市――中世から続くインドの町
40 コロニアル遺産を旅する――植民地の過去とその今を訪ねる
[コラム8]世界に広まった仏舎利塔
第Ⅸ部 インドの伝統文化を旅する
41 カラリパヤットゥに出会って――インドの伝統武術体験記
42 伝統医療アーユルヴェーダ――食べる、過ごす、命と向き合う
43 カルナータカ音楽の聖地へ――「チェンナイ詣で」のすすめ
44 インド古典舞踊を観る、楽しむ――感情を共にする醍醐味
45 南インドの芸能と祭祀――叙事詩と神霊の異界に誘われて
46 タール沙漠の民俗芸能――北西インドの粋な楽士たち
47 民芸品を求めて旅する――先住民が作り出すアート
[コラム9]古典舞踊・音楽を習う
第Ⅹ部 インドの現代文化を旅する
48 インド映画の世界を楽しむ――地元の人と親しくなれる近道はこれ
49 インドのスポーツ事情と観戦術――知られざるベスト・マッチを探しに
50 一粒で二度、三度おいしいインド現代美術の旅――インド・アートシーンの最前線
51 華麗なるインドのハイ・ファッション――パリ、ニューヨーク⇔デリー、ムンバイー
[コラム10]郵便局で切手を買う
第XI部 旅のおみやげ
52 染織布を味わう――インド特産の衣類と出会う旅
53 西インドの骨董巡り――生活に溶けこむ手仕事と時間の流れに思いを馳せる
54 良いタブラーの音色をもとめて――インドで楽器を探す旅
55 「輝けるインド」を見に行く――ショッピングモールに集う人びと
[コラム11]インド大衆宗教画蒐集譚――キッチュな絵から見えてきたもの
旅のおわりに
インドをより深く知り、旅を面白くするための基本図書
前書きなど
旅のはじめに
インドは日本の約9倍の広さを持ち、悠久の歴史が流れる国です。白亜のタージ・マハルやガンジス川の沐浴場など多くの観光地を持つインドは、今まで世界の旅行者を魅了してきました。しかし、本書を企画した目的は観光用のガイドブックではなく、これまでほとんど紹介されなかった「ディープ・インディア」ともいうべき、多様で深遠なインド世界に読者をお連れしようというものです。それゆえ、本書の執筆者には、長年インドでフィールドワークや研究を積み重ねてきた人びとを中心に、旅のスペシャリスト、インドに行って人生が変わってしまうほど深く関わってきた人など、みな長い時間をかけてインドとディープに接してきた人ばかりに集まっていただきました。
全体は55の独立した章と11本のコラムからなりますが、いくつかテーマごとにまとめて、「旅に出よう」、「インドの不思議都市を歩く」、「多様な宗教を旅する」、「さまざまな人に出会う」、「乗り物を楽しむ」、「インドを泊まり歩く」、「インドを食べ歩く」、「世界遺産を旅する」、「インドの伝統文化を旅する」、「インドの現代文化を旅する」、「旅のおみやげ」という11のパートで構成しました。これらのなかに、今まで知らなかったインドの見どころや新たな発見が必ずみつけられると信じています。
本書では旅を「観る」ものではなく「出会う」ものとして捉えています。インドに魅せられてきた人たちが、どのようなインドと出会い、そこでどのような関係を築いてきたのか。これからインド旅行を計画している方、もっとインドに深く入りたい方は、そうした執筆者たちの十人十色のインドとの関わり方を知ることで、自己流の旅を模索してほしいと考えています。誰も持っていない、世界で一つのインド像を読者の方々に構築していただければ、編者としては望外の喜びです。
(…後略…)