目次
はじめに
付録〈紙芝居ツール〉〈動画版〉の利用法
第1部 実践編
第1章 3つの島――ひょうたん島物語
1.状況設定
2.紙芝居ツールと読み聞かせ(朗読)、もしくは動画版の視聴
第2章 あいさつがわからない――異文化コミュニケーション【レベル1】
1.ねらい
2.時間
3.すすめ方
4.あいさつの役割カード
5.紙芝居ツールと読み聞かせ(朗読)、もしくは動画版の視聴
6.すすめ方とふりかえり、ここがポイント
第3章 カーニバルがやってきた――祝祭と労働【レベル2】
1.ねらい
2.時間
3.すすめ方
4.紙芝居ツールと読み聞かせ(朗読)、もしくは動画版の視聴
5.役割カードの内容
6.すすめ方とふりかえり、ここがポイント
7.現実、共生モデル
第4章 ひょうたん教育の危機――教育の国際化【レベル3】
1.ねらい
2.時間
3.すすめ方
4.紙芝居ツールと読み聞かせ(朗読)、もしくは動画版の視聴
5.役割カードの内容
6.「ひょうたん教育の危機」を救う9つの方法(ランキング)
7.すすめ方とふりかえり、ここがポイント
8.現実、共生モデル――外国人の子どもに対する学習支援
第5章 リトル・パラダイスは認められるか?――居住地域とコスト【レベル4】
1.ねらい
2.時間
3.すすめ方
4.紙芝居ツールと読み聞かせ(朗読)、もしくは動画版の視聴
5.役割カードの内容
6.「リトル・パラダイス」をめぐる9つの政策(ランキング)
7.すすめ方とふりかえり、ここがポイント
8.現実、共生モデル――集住と住み分け
第6章 ひょうたんパワーの消滅?――共有財産とは何か【レベル5】
1.ねらい
2.時間
3.すすめ方
4.紙芝居ツールと読み聞かせ(朗読)、もしくは動画版の視聴
5.すすめ方とふりかえり、ここがポイント
6.応用編:ひょうたん島問題」の全体をふりかえり
7.現実、共生モデル
第7章 日本に住む多様な外国ルーツの人々(語りとしてのロールプレイ)
1.ねらい
2.時間
3.すすめ方
4.日本に暮らす多様な外国にルーツを持つ人々(15人の人物誌)
5.すすめ方とふりかえり、ここがポイント
6.応用編:「〇〇(日本)人って誰?」
第2部 理論編
第8章 「ひょうたん島問題」とは何か
1.「ひょうたん島問題」
2.国境を越える人の移動
3.多文化学習
4.「ひょうたん島問題」の学習構造
5.多文化社会における民族・文化集団の相互関係
6.類型化とロールプレイ――議論の構造(レベル3「ひょうたん教育の危機」の場合)
7.問題の深刻化(居住地域とコストをめぐって)(レベル4「リトル・パラダイスは認められるか?」の場合)
8.普遍的な価値の設定(レベル5「ひょうたんパワーの消滅?」の場合)
9.多文化主義のジレンマ――文化摩擦・対立のサイクル
10.日本における多文化主義の可能性
11.ポスト「ひょうたん島問題」
12.シミュレーション「ひょうたん島問題」を含む学習単元
第3部 資料編
1.講演・ワークショップ配布資料
2.関連年表など
3.参考・関連文献
4.紙芝居ツール画像確認表
5.動画版(YouTube)一覧
おわりに
索引
前書きなど
はじめに
「ひょうたん島問題」は、移民や外国人労働者が増えつつある現代社会の課題とその解決のあり方を、多文化共生社会づくりの観点から、体験的に理解するためのシミュレーション教材として、今から四半世紀も前の1995年ごろに着想・構想され、教材の公開・検証をへたのち、国際理解教育や社会科・国際理解学習の観点から教材作成の意義を論じ、学習教材として成立した。2000年には、『ひょうたん島問題――多文化共生をめざして――地球市民教育参加体験型学習CD-ROM教材(テキストパック)』として動画版CD-ROM教材が出来上がった。しかしそれは、限定出版であったため、2008年に明石書店から旧版を出版することができた。だが、当初あった動画版については諸般の事情から断念し、紙芝居ツール版のCD-ROMとした。旧版は、おかげさまで、大学授業での教科書、中学校や高等学校での授業、小、中、学校教員の国際理解、人権教育の研修、自治体職員の人権研修、国際交流協会やNPO主催の市民講座など、多数の人々に支持していただき5刷ができるまでになった。
しかし、社会は、旧版出版当時とは明らかに異なる様相を呈してきた。旧版では、「現在(2007年)、日本における外国人登録者数は200万人をこえ、外国人の集住する市や町も増えている。学校では、外国人児童生徒が学んでいることは珍しくなくなった。なかには、日本語の学習が必要な子どもも多くなっている。少子高齢社会を迎えて、介護や看護、現場労働の一部を外国人に依存する時代がすぐそこにきている」と書いた。現在(2020年)は、政府は、労働者受け入れに方針を転換し(改定入管法、2019年4月施行)、外国人住民数はまもなく300万人時代になろうかとしているし、国籍や民族も多様化している。労働や雇用だけではなく、学校教育や居住環境、地域行政に関わる多文化共生や人権の課題が現出している。もちろん、そのような場面での問題解決に向けた創造的な取り組みも見られる。
旧版以後、私たちを取り巻く社会もまた、東日本大震災(2011年3月11日)、ヘイトスピーチの横行とヘイトスピーチ解消法(2016年6月施行)、新型コロナウィルスの世界的流行(2020年)など、多文化共生や人権に関わる変化を見せている。
もはや、旧版に任せておけないという思いを強く持った。新版では、「仮想現実の中で問題解決のあり方を探るシミュレーション教材」という「ひょうたん島」のコンセプトや大きな枠組みはそのままにして、動画版を復刻し、授業やワークショップで活用できるようにした。そして、この間、筆者がさまざまなところで行ってきたワークショップや研修の経験、多文化地域の訪問調査などの知見も入れて、「多文化共生社会ニッポンの学習課題」について改めて提案してみたい。
(…後略…)