目次
はしがき
第1部 教育開発への第一歩
第1章 教育開発について学ぶ[久保田賢一]
第2章 教育開発に関わる[岸磨貴子]
第3章 教育開発を検討する[久保田賢一]
第2部 具体事例から学ぶ教育開発
第4章 教育開発に関わるわたしの位置性――パレスチナ[岸磨貴子]
第5章 理科研究授業支援プロジェクトが生まれるまで――ザンビア[鈴木隆子]
第6章 実践コミュニティを通じた組織強化と学びのデザイン――エジプト[岡野貴誠]
第7章 自立発展を促す教育開発――パプアニューギニア[伊藤明徳]
第8章 パフォーマンスに焦点をあてた研修デザイン――ネパール[伊藤拓次郎]
第9章 研究会活動を通した教師の自立――ボリビア[西尾三津子]
第10章 教師の主体性を促す教育開発アプローチ――フィリピン[山本良太]
第11章 教育開発プロジェクトへの大学生の関わり――カンボジア[今野貴之]
第3部 これからの教育開発
第12章 座談会――経験者に問う「現場の実情」[時任隼平]
【座談会パート1】
1 教育開発プロジェクトの目標設定とはどのようなものなのでしょうか?
2 現場のニーズと教育開発プロジェクトの目標は合致していますか?
3 現場に入るのは難しくないですか? 専門家には何が求められるのですか?
4 現地の人たちとの対話のあり方は?
5 教育開発の中でも、大学が対象の場合と小学校~高校が対象の場合で内容は異なりますか?
6 教育開発にとって十分な時間というのは、どれくらい必要ですか?
7 教育開発を進めていくうえで、現場ではどのような連携が必要ですか?
8 教育開発を進めていくうえで、どのような限界がありますか?
【座談会パート2】
9 外部の人間が関わることによってどのような問題が生じるのでしょうか?
10 現地の人々にとって必要な環境とはどのようなものなのでしょうか?
11 現地の人々にとって必要な環境をどのようにして作っていくのでしょうか?
12 環境を作るとともに、どのようにして対話を進めていくのでしょうか?
13 対話の後、現地の人々が能動的になるにはどうすればよいのでしょうか?
14 教育開発における教育効果をどのように捉えればよいのでしょうか?
15 今後の教育開発のあり方は?
第13章 教育開発の展望[久保田賢一/時任隼平]
あとがき
前書きなど
はしがき
(…前略…)
■本書の構成
本書は、大きく3部から構成されています。第1部「教育開発への第一歩」は、導入部分です。教育開発に関心はあるけれど、何をどう学べばよいかわからないという読者はまずここから読み進めて下さい。第2部「具体事例から学ぶ教育開発」は、アジア、アフリカなど途上国の教育開発の事例を取り上げています。教育開発の専門家として、途上国で活躍する様子が描かれています。第3部「これからの教育開発」は、さまざまな途上国での教育開発を振り返り、課題を整理しこれからの方向を展望しています。
第1部は、3章で成り立っています。第1章は、途上国の教育開発に関心はあるが、どのように教育開発について学ぶべきかわからない読者に対して、教育開発の基本から解説しています。第2章は、学生時代から教育開発に関わってきた執筆者が、どのように教育開発に関わるようになったのか、体験を語ってもらいました。最初は、旅行者気分で参加した途上国への旅行から始まり、次第に途上国における教育の重要性に気づき、深く関わるようになっていくいきさつが語られています。第3章は、国際協力プロジェクトとしての教育開発を批判的に捉える視点から、援助をする側と援助を受ける側の関係性について日本の教育改革の事例を参照しながら分析しています。プロジェクトの規模が大きくなるに従い、多くの人が関わるようになり、効率的なプロジェクト運営が求められますが、効率のみに注意が払われると、教育の本質的な部分が欠落してしまうという課題が浮き彫りになってきます。
第2部「具体事例から学ぶ教育開発」からは、教育開発プロジェクトに参加してきた各執筆者が自らの体験をもとに、プロジェクトでの活動について語ってもらいます。第4章では、パレスチナ自治区でプロジェクトを形成するために、学校見学をし、現状を把握する調査を行う実践です。援助する側と援助される側との間で、教師に寄り添う教育開発はどうあるべきなのか検討します。第5章では、ザンビアにおける理数科教育プロジェクトを立ち上げるまでの経緯について説明しています。アフリカの理数科教育を日本からの援助として取り組むために、さまざまな関係者とダイナミックなやりとりをし、現場との折り合いをつけながらプロジェクトをプランニングしていく様子が描かれています。第6章は、エジプトに日本の協力で新しく大学を創設するプロジェクトを実施していく中で、専門家と現地の人たちとの関わり、大学運営の仕組みを構築していく過程が描かれています。第7章は、パプアニューギニアに30年暮らしている専門家の教育開発についての事例です。現地の女性と結婚し、そこに根を張っているからこそできる教育開発の活動について書かれています。第8章は、ネパールにおける地方公務員研修を行うインストラクター向けの研修開発プロジェクトです。政治体制が大きく変わり、民主化に舵を切ったネパールにおいて、「教室で教える人」という認識から、職場環境を整え、「クライアントに寄り添い支援する人」として、インストラクターの役割を変えていくプロセスについて紹介しています。第9章は、ボリビアの教育開発プロジェクトが終了するにあたりボリビア人教師による国語研究会を作り、プロジェクト終了後10年にわたり毎年全国大会を開催する事例です。第10章は、フィリピンの小学校においてICTを導入しようと介入を行った際、教師がICT活用にどう取り組むか調査をした事例です。第11章は、カンボジアの教員養成校において日本の学生が中心となって行う教育開発の事例を取り上げます。
第3部「これからの教育開発」は、全体のまとめの部です。第12章の「座談会 経験者に問う『現場の実情』」では、第1部、第2部で十分に語られてこなかった点やさらに深く議論する必要のある点に関して、より詳しい説明が追加されています。第13章は、本書全体を振り返り、整理しました。そしてこれからの教育開発は、単に援助する側として取り組むのではなく、協同して問題を見つけ、共に考え試行錯誤していく取り組みとして展望します。
(…後略…)