目次
はじめに
第1章 日本と朝鮮における儒教思想の特徴――抑商主義と男尊女卑思想
第1節 日本と朝鮮へ伝播した儒教思想の特徴
第2節 日本の徳川時代と朝鮮の李朝時代における儒教社会の特徴
第3節 李朝時代と徳川時代、抑商主義と男尊女卑思想の比較
(1)抑商主義
(2)男尊女卑思想
第2章 日韓併合時代の抑商主義と男尊女卑思想への対策
第1節 抑商主義対策
(1)朝鮮における商業の実態とその対策
(2)貨幣制度の改革と金融組合の設置
(3)カマス組合の設置
第2節 男尊女卑思想対策
(1)日本人女性による朝鮮人女性の教育(コロニアル・ミッショナリー)
(2)宇垣一成の「農村振興運動」にみる農業の活性化と女性活用策
第3章 北朝鮮社会における抑商主義と男尊女卑思想
第1節 北朝鮮と李朝の政治・経済体制の比較
第2節 社会主義体制での抑商主義――配給制度・私的商業活動の禁止
(1)配給制度
(2)配給制度の推移と実態
(3)抑商主義と闇市場の発達
(4)外貨稼ぎと闇市場
(5)抑商主義の克服――市場の整備
第3節 社会主義体制での男尊女卑思想――女性活用策と男女差別
(1)学ぶべき二人の女性――北朝鮮女性の二つの役割
(2)職場での女性の活用と男女平等法
(3)女性活用の実態
(4)既婚女性の労働――家事労働と「人民班」「女性同盟」での労働
(5)女性たちの労働の実態
第4章 北朝鮮の経済的困難と農業政策
第1節 北朝鮮の経済的困難
第2節 北朝鮮の農業政策――その実情と「苦難の行軍」
(1)北朝鮮の気候と農業の仕組み
(2)主体農法とは何か
第3節 「苦難の行軍」とそれ以降の農業政策
(1)新年辞にみる農業政策の変遷と「苦難の行軍」
(2)金正日の農業政策
(3)金正恩の農業政策
第5章 儒教社会に挑んだ北朝鮮の女性たち――抑商主義と男尊女卑思想の行方
第1節 「苦難の行軍」以降の女性たちの市場参加とその活躍例
第2節 北朝鮮の女性の意識は変わったか
(1)変わらないという意見
(2)変わったという意見
おわりに
前書きなど
はじめに
(…前略…)
筆者は以下の順序で、北朝鮮の女性たちの行動を考察しようと思う。
まず第1章では、日本と朝鮮へ伝播した儒教思想の特徴、具体的には日本の徳川時代と朝鮮の李朝時代における儒教社会の特徴を述べ、特に李朝時代の儒教社会で、抑商主義と男尊女卑思想を考えてみる。
第2章では、日韓併合時代、朝鮮に渡った日本人たちの抑商主義と男尊女卑思想への対策を見ていく。まず当時の朝鮮における商業の実態とその対策、具体的に金融組合の設置とカマス組合の設置をあげる。さらに男尊女卑思想対策として、具体的に日本人や朝鮮人の女性たちによる朝鮮人女性の教育(コロニアル・ミッショナリー)と宇垣一成の「農村振興運動」に見る農業の活性化と女性活用策を取り上げる。
第3章では、北朝鮮と李朝の政治・経済体制の比較により、いかに両国の体制が酷似しているかを証明した後、北朝鮮社会における抑商主義と男尊女卑思想の実態を明らかにする。
第4章では、北朝鮮の経済的困難と農業政策について振り返る。特に「苦難の行軍」と呼ばれる食料不足と農業問題に言及する。この食料不足をきっかけにして、女性たちが行動を開始したのである。
第5章では、「儒教社会に挑んだ北朝鮮の女性たち――抑商主義と男尊女卑思想の行方」と題して、「壮大な実験」と上述した女性たちの市場参加、すなわち「商売は女がやる仕事である」という挑戦を描いていく。さらに、「これによって北朝鮮の女性の意識は変わったか」もっと言えば、「抑商主義と男尊女卑思想から女性たちは脱却したか」という疑問にひとつの答えを出してみる。