目次
はじめに
第Ⅰ部 政治的アプローチ
第1章 国家建設と崩壊国家の理論[浜中新吾]
第2章 イスラームとデモクラシーをめぐる議論[末近浩太]
第3章 権威主義体制の理論[石黒大岳]
第4章 君主制の比較と理論[吉川卓郎]
第5章 政治過程論(選挙と議会制度)[荒井康一]
第6章 中東研究と国際政治の理論[溝渕正季]
第Ⅱ部 経済的アプローチ
第1章 政治経済学の考え方[今井真士]
第2章 中東地域研究とレンティア国家論[松尾昌樹]
第3章 イスラーム経済論[長岡慎介]
第4章 貧困・失業と経済格差・不平等の研究と理論[岩崎えり奈]
第5章 中東経済研究の成果と今後の課題[清水学]
第6章 エネルギーと資源問題の研究と理論[堀拔功二]
第Ⅲ部 社会的アプローチ
第1章 社会運動理論[溝渕正季]
第2章 市民社会論[浜中新吾]
第3章 ジェンダー理論と中東研究[嶺崎寛子]
第4章 中東・北アフリカの移民/難民研究[錦田愛子]
第5章 紛争研究の理論[浜中新吾]
第6章 時間と空間を超えたネットワーク[見市建]
第Ⅳ部 歴史的・思想的アプローチ
第1章 ナショナリズム論[私市正年]
第2章 サラフィー主義とイスラーム主義[渡邊祥子]
第3章 イスラーム急進派とテロリズムの研究[髙岡豊]
第4章 アラブ民族運動[北澤義之]
第5章 マイノリティ問題と研究[三代川寛子]
第6章 パレスチナ問題をめぐる研究[鈴木啓之]
第7章 ムスリム同胞団をめぐる研究[横田貴之]
第8章 イスラーム政治思想研究[福永浩一]
第Ⅴ部 地域事情と研究課題
第1章 エジプト[金谷美紗]
第2章 ヨルダン[清水雅子]
第3章 レバノン[溝渕正季]
第4章 シリア[髙岡豊]
第5章 イスラエル[浜中新吾]
第6章 サウディアラビア[辻上奈美江]
第7章 イエメン[松本弘]
第8章 イラク[山尾大]
第9章 湾岸諸国[石黒大岳]
第10章 スーダン[飛内悠子]
第11章 リビア[小林周]
第12章 チュニジア[若桑遼]
第13章 アルジェリア[渡邊祥子]
第14章 モロッコ[白谷望]
第15章 トルコ[岩坂将充]
第16章 イラン[貫井万里]
参考文献
人名索引
編著者紹介・執筆者紹介
前書きなど
はじめに
(…前略…)
本書は、「イスラーム地域研究」プログラム(人間文化研究機構〔NIHU〕)の研究グループ「イスラーム運動と社会運動・民衆運動」(上智大学、代表・私市)が、10年間(2006年度~2015年度)、取り組んだ共同研究の成果がもとになっている。ほとんどの執筆者がこれに参加した人たちである。私たちが、研究活動においてとくに重視したことは、地域を内側から詳細に知ろうとする地域研究的手法と、事実を一般的な枠組みで理解する理論的な分析手法の結合である。中東地域の複雑な様相を理解するには、どちらか一方によるのではなく、両者を相互補完的に用いた研究手法が必要である、と考えたからである。したがって、毎年、取り組む理論や方法論を決め、理論的な勉強をした後に地域の事例研究を討論形式で行った。実際にとりあげたテーマは、「市民社会論」「社会運動論」「ナショナリズムとサラフィー主義」「民衆運動」「イスラーム主義とデモクラシーの理論」「レンティア国家」「ポスト・イスラーム主義」などであった。これらの理論を踏まえて、参加者が個別の事例研究を発表する形である。発表者の多くが大学院生であったため、未熟な分析を批判されることもあったが、彼らが本書の執筆者として育ったのである。そのような意味では、「イスラーム地域研究」プログラム(プロジェクト)は重要な教育機能をも備えていたと言える。
本書には、これから中東地域の諸問題、イスラーム問題などに取り組もうとしている学部生、大学院生などにその研究の道標となるように、理論の概要や地域の概要とともに、今後取り組むべき研究課題、読むべき基本文献、発展的な調べを行うための研究文献が記述されている。ぜひ、本書を活用して、重要であるが、わかりにくい、常識が通用しない、と言われる中東の諸問題の解明に取り組んでいただきたい。若い研究者たちが自らの教育体験(批判されたり、ほめられたりしながら)を通じて学んだ、中東を理解するための知識や考え方が、本書にはたくさん詰まっている。若い皆さんには、それを学び取っていただきたいと思う。
(…後略…)