目次
はじめに
アメリカ先住民保留地
Ⅰ 連邦─インディアン関係
第1章 条約──条約は、インディアンの有利に解釈される
第2章 強制移住──繰り返される「涙の旅路」
第3章 BIA──先住民による、先住民のための政府機関へ
第4章 保留地──先住民自治の最重要根拠地
第5章 インディアン同化政策の実像──移民同化政策との違いに注目して
第6章 一般土地割当法──文明化への幻想と現実
第7章 合衆国市民権と先住民──「インディアン部族」概念の歴史的変遷
第8章 インディアン再組織法──部族の自治、自活に向けて
第9章 部族政府──伝統と自治のはざまで
第10章 自治問題──連邦、州と区別される「第三の主権」
第11章 連邦承認部族──政府から「部族」と認められることの意味
第12章 民族自決──ネーション内のネーション
第13章 インディアン請求委員会──先住民の土地返還請求とその顛末
第14章 アクティビズム──民族自決と文化再生に向けて
第15章 インディアン教育補助法──部族管理へと移行する先住民教育
第16章 アメリカ・インディアン信教自由法──インディアンは、伝統的な宗教を信仰する権利をもつ
第17章 アメリカ先住民墓地保護および返還法──NAGPRAが問う先住民の人権
第18章 インディアンとアメリカの戦争──戦士の伝統と現在
Ⅱ 現代社会問題
第19章 インディアンとは誰なのか──決めるのは誰か
第20章 人口統計──人種・民族的混血が進むアメリカ先住民
第21章 都市インディアン──都市化と文化継承
第22章 健康問題──心身ともに健康であるためには
第23章 経済問題──広がる部族間格差
第24章 部族大学──先住民部族社会による大学運営の開始
第25章 言語維持──部族語の現在と行方
第26章 文化復興──インディアン・アイデンティティとスピリチュアリティ
第27章 インディアン・カジノ──「新しいバッファロー」になりえるのか
第28章 ステレオ・タイプ──歪んだイメージを越えて
第29章 部族民認定──血統主義が生み出す混乱
第30章 環境問題──危機的状況を生き抜く、未来に希望をつなぐ
第31章 インディアン・メディア──多様な展開と役割
第32章 「国境」を越えた先住民族運動──国家への抵抗からグローバルな連帯へ
第33章 国立アメリカ・インディアン博物館──進化する「生きた記念館」
第34章 ジェンダー──女性が尊重されていた先住民社会
第35章 ブラックヒルズ訴訟──聖地の売却拒否
第36章 古戦場の史跡保存──先住民の過去とアメリカの未来
Ⅲ 文化と宗教
第37章 創世神話──ペンも紙も必要としない、生きた教材
第38章 聖地とその保護──伝統的世界観の保護とその再生
第39章 ヴィジョン・クエスト、スウェットロッジ、サンダンス──汎インディアン化する儀式
第40章 メディスンマン──精神文化の伝承者
第41章 スネークダンス──荘厳な降雨儀礼の歴史記述と現在
第42章 トーテムポール──北西海岸先住民文化の象徴
第43章 ポトラッチ/ギブ・アウェイ──寛容さの具現化
第44章 ネイティブ・アメリカン・チャーチ──新興宗教からアメリカ先住民の宗教へ
第45章 パウワウ──文化継承と商業化
第46章 ナヴァホの砂絵──儀式と砂絵の役割
第47章 カチーナとカチーナ人形──乾燥地に降雨をもたらす超自然的存在
第48章 伝統工芸──創られた伝統としてのホピの銀細工
第49章 アメリカン・インディアン・アーツ研究所──「創造は我々の伝統である」
第50章 サンタフェ・インディアン・マーケット──インディアン文化のアリーナ
第51章 ホビイスト、ヒッピー、ワナビー──「インディアン」になる意味
第52章 アメリカ先住民の文学──文化の創造的な継承
第53章 ベルダーシュ──「例外」を認める大らかな社会の象徴
第54章 トリックスター──聖者か世紀の大ペテン師か
Ⅳ 人物
第55章 イシ──故郷の森から大都市サンフランシスコへ
第56章 ルイスとクラーク、カトリン、カーティス──先住民文化の奥に分け入った先駆者たち
第57章 パフォーミング・アーティスト──「インディアン」を演じる意味
第58章 ジム・ソープの栄光の陰に──先住民のスポーツ選手とアメリカのスポーツ文化
第59章 政治家・指導者──アメリカ合衆国政府とわたりあう人びと
第60章 知識人・活動家──先住民リーダーシップの軌跡
第61章 三人の先住民ヒロイン──虚像と実像のはざまで
第62章 先住民アーティスト──文化遺産と現代をリンクする人たち
インディアン史 略年表
前書きなど
はじめに
(…前略…)
第Ⅰ部「連邦―インディアン関係」では、過去から現在にいたる連邦インディアン政策の重要部分、またそれら政策へのインディアン社会の対応を項目化した。それによって、連邦―インディアン関係の歴史と問題点、その関係性が規定してきたインディアンの合衆国における政治的・社会的・法的立場の複雑さ、および現在の課題が明らかになることを意図している。
第Ⅱ部「現代社会問題」では、インディアン社会の今日の現実を可能な限り詳らかにした。インディアン社会共通の負の体験から導きだされる経済や健康といった深刻な社会問題、インディアン社会の民族再生に向けての取り組み、部族民認定等の部族社会の今日的課題、戦跡保存や博物館設置のための合衆国との交渉など、先住民が直面する現代的イシューを通して、インディアン社会の今を見渡せるよう努めた。
第Ⅲ部「文化と宗教」では、インディアン文化の豊かさを伝えることを目指した。宗教儀式に代表される伝統文化は、部族固有性が高く、一般化することはできない。本章で取り上げた儀式は、主に南西部、北西海岸、大平原地域の先住民のものだが、それらの儀式が信仰心に支えられ、現在も力強く実践されており、ある意味先住民の「代表的」儀式になっていることを、選択の指標とした。一方、メディスンマン、ベルダーシュやトリックスターのような部族横断的な文化事象、パウワウやインディアン・アートが示す創造的側面、脱部族的傾向、さらに一部部族儀式の汎インディアン化など、固有の文化伝統ばかりでなく、インディアン文化の柔軟性を動態的に伝えようとしたのが本章である。
第Ⅳ部「人物」では、歴史的人物、インディアン社会の政治、芸能、アート、スポーツ界の著名人、インディアンを描いた白人たちを紹介した。全62章を通して、読者のアメリカ・インディアンとその社会への理解が深まることを願っている。
(…後略…)