目次
本書の刊行に寄せて[フィリッポ・グランディ]
はじめに[滝澤三郎]
第1部 国際政治と難民問題[山田満]
第1章 国民国家と難民
第2章 冷戦後の世界と難民
第3章 難民問題の政治経済学
コラム 「難民」として日本で暮らした経験から思うこと[その1] 日本における「難民」受け入れの教育・社会問題[ミョウ・ミン・スウェ]
第2部 難民と強制移動のダイナミズム[山本剛]
第4章 難民「問題」から難民「危機」へ
第5章 紛争と難民
第6章 環境と難民
第7章 経済開発と難民
コラム 「難民」として日本で暮らした経験から思うこと[その2] 難民との共存・共生を目指した日本社会を求めたい[ミョウ・ミン・スウェ]
第3部 国際機関と難民[堀江正伸]
第8章 難民救援機関としてのUNHCR
第9章 難民と国内避難民
第10章 国内避難民救援機関とは何か
第11章 保護クラスターをめぐる国際人道支援機関
第4部 難民の社会統合[人見泰弘]
第12章 難民受け入れと法的保護──法的地位の多様化と階層化
第13章 難民受け入れと就労──エスニック・コミュニティと経済的自立への道
第14章 難民受け入れと難民二世の教育──教育達成経路の多様化
第15章 難民受け入れとジェンダー──ジェンダー規範への挑戦・強化・再生産
コラム 「ファンドレイザー」という職業について[鳥井淳司]
第5部 第三世界の難民[佐藤滋之]
第16章 第三世界の国々での難民流入への対応
第17章 第三世界における難民問題の現状
第18章 アジア太平洋地域の難民
第19章 アフリカ・中東地域の難民
コラム 「食」を通じた難民支援を目指して[テュアン シャンカイ]
第6部 ヨーロッパの難民問題[橋本直子]
第20章 二つのヨーロッパ
第21章 欧州連合(EU)の難民政策
第22章 欧州評議会(Council of Europe)の難民政策
第23章 最近の欧州における「難民危機」
第7部 米国の難民問題[佐原彩子]
第24章 米国における難民概念──難民概念の変遷とその意味
第25章 米国国境を越える中米難民──米国政府の取り組みと課題
第26章 米国の難民政策──その現状と課題
第27章 米国における移民問題と難民問題──非合法移民問題と退去強制
コラム 難民交流プロジェクト──早稲田発フットサルを通じた難民交流[酒井亮圭]
第8部 日本の難民問題[滝澤三郎]
第28章 日本の難民受け入れの歴史(インドシナ難民の受け入れ)
第29章 インドシナ難民の定住・社会統合状況
第30章 第三国再定住の試み
第31章 日本の難民政策の問題点
コラム 難民支援・研究団体 PASTEL[尾関花保]
第9部 難民と人間の安全保障[山本哲史]
第32章 「保護する責任」と難民
第33章 テロリズムと難民
第34章 難民と人間開発
第35章 難民支援の多角的アプローチ
あとがき[山田満]
編著者紹介
前書きなど
はじめに
(…前略…)
本書について
複雑な難民問題について理解をするのは容易ではなく、「誤解」も生じやすい。また誤解はさらに難民問題に対する対応と政策を誤らせる原因ともなる。にもかかわらず、大学生が基本的な理解を得るために使うのにふさわしい教科書がないのが現状である。
本書は、難民問題の理解を、法律学、政治学、経済学、社会学などインターディシプリナリーなアプローチで深めることを目指す。第1部から第4部までは「難民問題」の理論的な問題を扱い、次の第5部から第8部までは世界各地域の取り組みを考察する。最後の第9部では再び難民支援のあり方を論じる。
(…中略…)
以上が本書の各部章の内容と位置づけである。同様な内容を各章で扱う場合もあるが、そのアプローチはそれぞれ異なり、難民問題の多面的な側面を理解するうえで有益と考える。その他、難民支援に関わる若者の活動報告やUNHCRの公式支援窓口になっている国連UNHCR協会の活動をコラムで紹介している。なお、1番目と2番目のコラムは実際に難民認定を受け日本で生活を送ったミョウ・ミン・スウェ氏(ミャンマー人)のエッセーである。
日本の気鋭の若手研究者・実務家が参集して書き下ろした教科書であり、編著者として読者の反応を期待するところである。