目次
はじめに
図表一覧
第1章 1973年以後の世界の原発産業
1 世界の原発の現状
2 石油危機と先進国のエネルギー政策の転換
3 世界のマネーゲームと原油価格の高騰
4 ブッシュ政権のエネルギー政策と「原子力ルネサンス」
5 WH社の売却と世界の原発メーカーの再編
6 アメリカの「シェール革命」
7 「シェール革命」とアメリカの貿易収支
8 「シェール革命」とアメリカの原発産業
9 2014年後半の世界原油価格の暴落
第2章 中国の原発産業
1 中国の「原発大国」への道
2 中国の原発産業の現状
3 中国の第3世代炉の開発
4 中国の原発産業の問題
第3章 日本の原発輸出
1 「原子力政策大綱」(2005年)
2 「原子力立国計画」(2006年)
3 民主党政権の「エネルギー基本計画」(2010年6月)
4 原発新増設の停滞
5 電力市場の自由化と原発産業
6 「原子力ルネサンス」と福島原発事故
7 自民党安倍政権の誕生と原発輸出の売り込み
8 安倍政権の「エネルギー基本計画」(2014年4月)
9 日本の関係する海外の原発事業
10 日本の原発メーカー3社の受注・納入実績
11 トルコへの原発輸出の事例
12 日本の原発輸出に関連する具体的な問題点
第4章 福島原発事故と経済的損失
1 4つの福島原発事故調査報告書
2 福島原発事故の経済的損失と負担
3 原発の経済性
第5章 原発産業と「原発マネー」
1 「原発マネー」と政治家・官僚の天下り
2 「原発マネー」と地方自治体
3 「原発マネー」とマスコミ
4 「原発マネー」と学者
5 「原発マネー」と「原発事故責任」
終章
1 戦後70年と日本の国際貢献
2 福島原発事故と日本の敗戦との共通性
3 今日の原発産業と原発輸出
4 科学をめぐるカネと政治
5 福島原発事故と科学者
6 原発は「バベルの塔」
7 現代世界の優先課題
あとがき
主な参考文献・資料
前書きなど
はじめに
(…前略…)
そこで本書では、世界経済の変動と関連させながら世界の原発産業の動向および中国の原発産業の現状・問題点を分析すると同時に、日本の原発輸出の経過・現状・問題点、福島原発事故と経済的損失、原発産業と「原発マネー」などを分析する。
全体は、次の5つの章より構成される。
第1章「1973年以後の世界の原発産業」においては、第一次石油危機後の世界の原発産業の動向を分析する。2つの石油危機の影響による1970年代および1980年代の原発の新増設の激増、1990年代の電力市場の自由化と原発の新増設の停滞、2000年代の世界のマネーゲームの展開と世界の原油価格の高騰、ジョージ・ブッシュ政権による原発推進と原発輸出のエネルギー政策の展開ならびに「原子力ルネサンス」の盛り上がり、2005年に発効した「京都議定書」と原発産業、ウェスティング・ハウス社(WH社)の売却と世界の原発メーカーの再編成、アメリカでの「シェール革命」の進展と原発産業、2014年後半の世界原油価格の暴落と原発産業など、2015年1月時点の世界経済の変動と原発産業の動向を分析する。
第2章「中国の原発産業」においては、大きな経済成長を支えるためのエネルギー確保に加えエネルギー消費の約3分の2が石炭であるため深刻な環境汚染の問題を抱える中国の選択が「クリーン・エネルギー」の1つである原子力エネルギー(原発の新増設)であったことを明らかにする。(…略…)「原発大国」への道を歩む中国の経済成長との関連で原発産業を分析する。また、中国の原発メーカーの歴史と特徴を分析しながら、第3世代炉と呼ばれる最新鋭の原発開発と同時に、原発輸出を展開する中国の原発産業の現状と問題点を明らかにする。
第3章「日本の原発輸出」においては、2005年のブッシュ政権の「エネルギー政策法」(通称「包括エネルギー法」)の発表を受け、「原子力大綱」(2005年)、「原子力立国計画」(2006年)、民主党政権の「エネルギー基本計画」(2010年6月)、安倍政権の「エネルギー基本計画」(2014年4月)がつくられるが、その間の原発推進と原発輸出の変遷を分析し、その特徴と問題点を明らかにする。(…略…)現在日本の関係する海外の原発事業を整理して示し、特に、トルコの事例を取り上げて分析し、「買手市場」となっている世界の原発市場の実態を明らかにする。また、日本の原発輸出に関連する具体的な問題点も考察する。
第4章「福島原発事故と経済的損失」においては、2012年に公表された4つの事故調査報告書(民間、東電、国会、政府)を取り上げ、その問題点を明らかにしながら分析する。また、福島原発事故の経済的損失と経済的負担についても整理して分析する。最後に、原発の経済性について長期的な経済的な採算性について分析する。
第5章「原発産業と『原発マネー』」においては、原発の「安全神話」を形成した「原子力ムラ」の実態を「原発マネー」の流れを分析しながら明らかにする。電力業界を中心とした政治家、官僚(天下り)、マスコミ、学者の「原発産業のペンタゴン」(原発の5者同盟)への「原発マネー」の流れを解明する。さらに、1973年に成立した「電源三法」を基礎とする地方自治体への「原発マネー」についても分析する。最後に、福島原発の事故責任についても考察する。ある意味で、福島原発事故は第二次世界大戦の日本の敗戦と非常に類似している。
なぜ福島原発事故が発生したのか、歴史的、政治的、社会的、経済的な背景と要因が明らかにされる必要がある。事故責任が曖昧にされたまま、歴史のなかで消え去ることは許されない。第二次世界大戦の日本の敗戦の戦争責任と同じ「歴史の誤り」を繰り返してはならない。
(…後略…)