目次
謝辞
序文
はじめに
◆困った行動◆
1章
メルトダウンとは?――報酬と罰ではうまくいかない状態
メルトダウンってなに?
通常の子育てアドバイス――ルールと結果を一貫させるところからスタートしましょう
しつけにも限界がある――報酬と罰の効果がないとき
自分の思いどおりにさせようとして、メルトダウンを起こすのでは?
メルトダウンしないなんて本当にできる?
4-ステップモデル
2章
メルトダウンはなにからできているのか?
メルトダウンは、「戦うか、逃げるか、凍りつくか」の反応
気質
抽象的思考と視点取得が難しい
柔軟性の欠如
暴発を起こさせる組み合わせ
◆解決法◆
3章
子どもを受けいれて、認めましょう
おとながフラストレーションを調節する
「自分はできる」という意識を築く
学習性無力感を回避する
80/20のルール
フラストレーションを学習の一部として受けいれる
主導権争いをやめるタイミング
4章
メルトダウンを静めましょう
メルトダウンを静めるにはどうするか
気をそらす
あまりに気をそらしすぎて、かえってひどくしてしまう場合
子どもに自分の気持ちを落ちつかせる対処法を見つけださせる
自分の気持ちを落ちつかせる対処法を見つけだすためのステップ
5章
どうして同じ問題が
くり返し起こるのか理解しましょう
引き金を理解する
行動のABC:先行条件、行動、結果
ABCの情報を集める:話を聞いて、観察する
パターンを見つける
6章
メルトダウンを未然に防ぐ策を講じましょう
メルトダウンを未然に防ぐよい防止策とはなにか
ケビンのメルトダウンを未然に防ぐ策
メルトダウンを引き起こす4つの状況
◆メルトダウンを起こす4つの状況とその対応策◆
7章
要求
学校の宿題をやりなさい
食べてみたら、おいしいよ
急いで、バスがきちゃうよ!
片づけなさい
パーティーに行こう
8章
待つこと
待ちなさい
いつも欲しいものが手に入るとはかぎらない
さあ、遊びの時間はおしまい
9章
自己イメージへの脅威
勝つことがすべてではない
間違ってもいいんだよ
悪口なんかでは傷つけられない
10章
注意を向けられたい願望
いまは遊べない
やきもちを焼かないで
寝る時間です
11章
おわりに――自分なりの方法を見つけましょう
防止策立案用紙
参考文献
場面別 問題解決の手引き
○宿題をやらない
○初めて食べるものを嫌がる
○朝の支度ができない
○片づけられない
○初めての場所に行くのを怖がる
○待てない
○「だめ」という返答を受けいれられない
○楽しい活動をやめられない
○負けることに耐えられない
○間違いが許せない
○いじめられる
○だれも遊んでくれない
○かまってもらっている子にやきもちを焼く
○子どもを寝かしつけられず、親が眠れない
前書きなど
序文(キャロル・S.クラノウィッツ)
古代ギリシャの神話に、シーシュポス王の話があります。シーシュポス王は、いつも怒りをたぎらせ、人に当たり散らし、家族や臣下、客人、神々をないがしろにしていました。みなを働かせて、自分は上からそれを見ていました。理性に耳を傾けることも、適切な判断をすることも、神に従うこともしようとはしませんでした。あまりの傍若無人なおこないに、ついには神々も怒り、シーシュポスをこらしめようとします。その罰とは、大きな丸い岩を、永遠に山の頂上に押しあげていかなければならないというものでした。シーシュポスは大変な苦労をして岩を頂上まで押しあげますが、あっという間に、岩はふもとまで転がり落ちてしまいます。シーシュポスは永遠にその岩を追いかけ、肩に載せ、山頂に押しあげていく運命にあるのです。
何度も、何度も――。
あなたの家庭や教室にも、この神話に出てくる王のような子がいませんか? ごく当たり前の要求(布団から出なさい、ニンジンをちょっとだけ食べてごらん、人に手を出さないで)に対して、その反対のことをして、あなたを怒らせ、イライラさせるのです。その子には、自分の行動を変えるためのスキル(方法)が欠如していませんか? まったく効果がないのに、あなたはおだてたり、理詰めで話したりしようとしていませんか? あなたも子どもも、こうした八方ふさがりの状況から抜け出せなくなっていませんか? 子どもがお決まりのひどいかんしゃく(メルトダウン)を起こし、あなたはむだと知りつつ罰をあたえて、こうした状況を終わらせていませんか?
それとも、あなた自身をシーシュポス王のように感じていませんか? 子どもとの関係に満足できず、まるで、重い「岩」をむだと知りつつ、永遠に押しあげているかのように感じているかもしれません。この悪循環を断ち切ることなどできないという気持ちになっているのではないでしょうか。
だれか、この悪循環を断ち切らせてくれないだろうか、そうしたら、子どもといっしょに頂上にたどりつき、そこに留まることができるのに――そう願ってはいませんか?
それなら、この本がお役に立ちます!
このすぐれた本では、ジェド・ベイカー博士が、どうすることもできない行動に対処し、それを未然に防ぐツール(手段)を紹介しています。博士は、まずおとなが自分の行動を変化させる方法を理解することで、子どもの行動も変化させられると指摘しています。
博士は例を挙げて教えてくれますが、どれもうなずいてしまう話ばかりです。
(…中略…)
本書は大変すぐれたものだと思います。子どもたちによく見られる例を取りあげていて、説得力があります。ユーモアを交えながら、ベイカー博士が初期に失敗してしまったアプローチのことまでも明かしています。本書は、細かいところまで気を配りながら、かつ柔軟に、希望をもって子どもに接するよう、読者を励まします。そうすることで、わたしたちは子どもに前向きな行動の手本を示せるのです。本書を通じて感じられるのは、家庭や教室に君臨する若き「王たち」に対する、著者のやさしいまなざしです。こうした子どもたちは、自分でも懸命に対処しようとしているのです。ベイカー博士は、もし親や先生が、本書で紹介している方法を使って、子どもたちに力を貸すことができれば、子どもたちはもっとうまく対処できるようになるし、そうしようとするだろうと、自信をもって述べています。